大学院農学生命科学研究科長・農学部長 丹下健

大学院農学生命科学研究科長・農学部長
丹下 健(たんげ たけし)

 我々人類の生活は、植物が光合成生産する有機物に依存しています。農学は、人口増加に伴い増大する生物資源の需要に応えるだけではなく、生物資源生産の持続性を支える学問として生まれ発展してきました。農学が担う第一次産業は、主に自然環境のもとで生育する生物を対象とすることから、育てる生物の生態・生理特性だけではなく、自然界のメカニズムを理解することが必要です。また広大な土地の利用・改変を伴うことから、それを支える工学的な技術や社会制度、経営システムの研究も必要です。農学は、生命科学から生物資源学、環境科学、工学、経済学、社会科学まで、広範な学問分野が有機的に結びついた総合科学と言えます。

 温暖化など地球規模で進行する気候変動が顕在化し、近年では異常気象も頻発し、人命や財産が危険にさらされることが多くなりました。気候変動は、自然環境に依存する第一次産業にも大きな影響を与え、将来的にはさらに深刻な影響が予測されています。安全な食料の安定供給と地球環境の保全が人類にとって最大の課題であり、農学にとって、その解決に向けた技術的や社会的な対策を担う役割は、ますます大きくなっています。つまり生物が有するさまざまな機能を解明し、人間社会の将来に役立てることが期待されているのです。

 東京大学では平成27年4月から、国際流動性の向上や学習機会の多様化などを目指す「国際化」、主体的学びの促進や質の向上・量の確保などを図る「実質化」、4年間を通じた高度教養教育やイノベーション創出を促す専門教育などに向けた「高度化」の3本の柱のもとに、学部教育の総合的な改革がスタートしました。推薦入試の導入や4ターム制の学事暦への移行などの教育体制の変更とともに、初年次教育の充実などの教育内容の改善が実行されます。農学生命科学研究科は、附属施設が管理する森林や水田・畑、牧場などのフィールドと講義室をネットワークで結んで行う、参加型授業を新入生に提供します。農学部では、確かな専門性とともに俯瞰的な視座の養成を目的に、農学を段階的・体系的に学ぶための課程・専修制をとっています。教育改革にあたっても、専門領域についての深い理解を目指すとともに、多様な学問分野から構成される農学を実感できる、分野横断型教育プログラムの充実を図っています。その一つである産学官民連携型農学生命科学研究インキュベータ機構(アグリコクーン)では、食の安全やバイオマス利用、農における放射線影響などについて、企業や行政、NPOなどと連携した現場での活動を通じた課題解決型教育を実施しています。大学院では、本研究科で行われている先端的な研究活動を大学院教育に反映させ高度な専門性の養成を図るとともに、農学が担うべき課題に関する幅広い知識の習得も進めて行きます。

 教育研究の国際化などこれからも引き続き取り組みを進めていく課題を含め、農学生命科学研究科では教職員一丸となって総合科学としての農学の発展と優れた人材の育成に向けて努力して行きます。




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