発表者
麻生 愛花(東京大学大学院農学生命科学研究科 応用生命化学専攻)
一法師 克成(独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所)
山岸 直子(独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所)
守谷 直子(独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所)
青木(吉田) 綾子(独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所(本年4月より東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻))
後藤 達彦(茨城大学農学部生物生産科学科)
豊田 淳(茨城大学農学部生物生産科学科)
山本(前田) 万里(独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所)
鈴木 チセ(東京大学大学院農学生命科学研究科 応用生命化学専攻、独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所)

発表のポイント

◆社会的敗北ストレスによりマウスの胆汁酸代謝のバランスが崩れ、デオキシコール酸など毒性の強い胆汁酸が増加することを明らかにしました。

◆非侵襲的にサンプリングできる糞便中の胆汁酸を用いて、精神的ストレスに起因する消化管症状を軽減する食品のスクリーニングへの可能性が開けました。

発表概要

図1 社会的敗北ストレス負荷がマウスの胆汁酸産生に及ぼす影響
(拡大画像↗)

脳と腸は、神経系、内分泌系、免疫系、さらには腸内菌叢をも介して双方向的なネットワーク「脳腸相関」を形成しています。精神的ストレスモデルである社会的敗北ストレスを負荷したマウス1, 2)を用いて、青木らはストレスにより盲腸内容物中の代謝物や腸内細菌叢が変動していることを報告しました(日本食品免疫学会第10回学術大会)。盲腸内容物のメタボローム解析の結果、ストレスを負荷したマウスではコール酸が有意に増加していました。本研究ではUPLC-MSにより社会的敗北ストレスを負荷したマウス糞便中の胆汁酸の解析を行うことでストレスが各種胆汁酸生成に与える影響を明らかにしました。ストレスを与えられたマウスでは腸内細菌が産生する二次胆汁酸の一つ、デオキシコール酸が有意に増加することが確認されました。

参考資料

 本研究は農研機構「機能性をもつ農林水産物・食品開発プロジェクト」および戦略的イノベーション創造プログラムSIP「食シグナルの認知科学の新展開と脳を活性化する次世代機能性食品開発へのグランドデザイン」の一環として行いました。
1) Goto et al. Behav Brain Res. 270:339-348 (2014)
2) Goto et al. J Proteome Res. 14:1025-1032 (2015)

問い合わせ先

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所
鈴木 チセ (すずき ちせ)
住所:〒305-0901 茨城県つくば市池の台2
Tel:029-838-8687
Fax:029-838-8606
E-mail:csuzuki@affrc.go.jp