褐藻成分フコースが哺乳類の肥満を予防
伊東 美保 (東京大学大学院農学生命科学研究科水圏生物科学専攻 修士課程)
苑 暁 (東京大学大学院農学生命科学研究科水圏生物科学専攻 研究生)
大原 和幸 (東京大学大学院農学生命科学研究科 特任研究員 当時)
佐藤根 妃奈(東京大学大学院農学生命科学研究科 特任研究員 当時)
小南 友里 (東京大学大学院農学生命科学研究科水圏生物科学専攻 博士課程)
相澤 光輝 (焼津水産化学工業株式会社 開発本部)
上野 友哉 (焼津水産化学工業株式会社 開発本部)
松田 秀喜 (焼津水産化学工業株式会社 開発本部)
潮 秀樹 (東京大学大学院農学生命科学研究科 教授)
◆コンブなどの褐藻類に多く含まれ、ヒトの母乳にも存在するフコースが、高カロリー食の摂取による肥満を抑制することを明らかにしました。
◆フコースの摂取によって、内臓脂肪の蓄積が予防されました。
◆フコースの摂取によって、脂肪細胞や肝臓における脂質異化が促進しました。
【図1】 高カロリー食による内臓脂肪蓄積(対照区)とフコース投与による内臓脂肪蓄積抑制効果(フコース含有飼料区).(拡大画像↗)
東京大学大学院農学生命科学研究科 潮秀樹教授らの研究グループは、焼津水産化学工業との共同研究により、昆布などの褐藻類に含まれ、ヒト母乳中にも存在する“フコース”の機能性開発を進めています。本研究では、高カロリー食によって肥満させたマウスに対するフコースの影響および、フコースがマウス脂肪細胞に及ぼす影響について検討しました。
マウスに高カロリー食と共に各種濃度でフコースを摂取させたところ、対照群と比べて0.01および0.1%フコース投与群で有意に体重増加が抑制されました。また、肝脂肪量には有意な差は認められなかったものの、9日および25日目に内臓脂肪量の有意な低下が認められました(図1)。さらに、マウスにフコースを経口投与し24時間後に肝臓のトランスクリプトーム解析をした結果、複数の脂質代謝関連因子の発現が有意に変動していることから、遺伝子発現レベルでも脂質蓄積の抑制および脂質異化の促進が裏付けられました。
次に、マウス脂肪細胞を用いた試験では、前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化がフコースによって遅延されることが明らかとなりました。また、成熟した脂肪細胞にフコースを投与すると、脂質の異化が促進されることが明らかとなりました。これらのことから、フコースは、脂質の代謝を制御して、内臓脂肪の増加を主因とする体重増加を抑制すると考えられます。