東京大学農学生命科学研究科プレスリリース

2007/10/5

「イネのホウ素トランスポーターの役割と発現制御」

発表者:生物生産工学研究センター 植物機能工学部門  
 准教授 藤原 徹

発表概要

イネのホウ素トランスポーターを同定し、ホウ素の吸収と地上部への輸送に関与することを示すと共に、ホウ素栄養条件に応じた興味深い発現制御を受けることを明らかにした。
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発表内容

ホウ素は植物の必須元素ですが、高濃度に存在すると毒性を示します。世界には土壌のホウ素濃度が低い地域や高すぎる地域が存在します。植物は環境中のホウ素濃度に応じてホウ素の吸収や体内輸送を制御していると考えられます。私たちは、数年前にシロイヌナズナから生物界で初めてのホウ素トランスポーターを同定しましたが、今回はイネの、ホウ素トランスポーターを同定しその役割や発現制御についての研究を行いました。
  イネのホウ素トランスポーターOs BOR1はシロイヌナズナのもの(At BOR1)と同様に、排出型でした。すなわち、細胞内のホウ素を細胞外にくみ出す活性を持っていました。しかし、Os BOR1はAt BOR1とは異なって、ホウ素の地上部への輸送だけでなく土壌からの吸収にも関与していること、ホウ素栄養条件によって主に発現している組織が変化すること、を明らかにしました。図に示すように、ホウ素が十分(B+)で栽培すると根の中心柱付近に比較的強い発現が見られますが、ホウ素欠乏条件に移すと、表皮近くでの発現が強くなります。このような興味深い発言制御は、栄養条件に応じた効率的な輸送に重要であると考えられます。
  このようなトランスポーターを利用してホウ素栄養条件の必ずしも適切で無い土壌での作物生産を高めることが期待されます。

図の説明
  Os BOR1のプロモーターにGUS遺伝子を連結たものを持つイネを通常条件(B+)で栽培し、根の横断面のGUS活性(青色で示される)を調べたものと、通常条件での栽培後3日間ホウ素欠乏(B-)で栽培したもの。ホウ素栄養条件によって、発現が強く見られる細胞層が違っている。


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発表雑誌

The Plant Cell, Vol. 19: 2624?2635, August 2007,
Yuko Nakagawa, et al., “Cell-Type Specificity of the Expression of Os BOR1, a Rice Efflux Boron Transporter Gene, Is Regulated in Response to Boron Availability for Efficient Boron Uptake and Xylem Loading”


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