東京大学農学生命科学研究科お知らせ

平成22年度春の褒章で紫綬褒章を受章-阿部啓子 東京大学名誉教授(応用生命化学専攻)-

阿部啓子 名誉教授が、食品科学の研究における功績により、平成22年度春の褒章で紫綬褒章を受章されました。

阿部啓子大学院農学生命科学研究科・元教授
阿部啓子 東京大学名誉教授

阿部先生は、食品の“おいしさ”を、物質科学と生体科学の両面から表裏一体のものとして解析を行ってきました。生体科学の面においては、『味覚』という感覚情報を的確にとらえ、食品の『味』を深く理解するため、「味物質→味細胞→味神経→中枢」に至る各段階の現象を機能分子の実体から明らかにする方法論、つまり味覚分子論という考えを提示し、実証してきました。また物質科学の面においては、熱帯植物果実から精製して構造決定した味覚修飾タンパク質(ネオクリンと命名)の持つ、酸味を減弱して甘味を増強する味覚修飾活性の作用機序を明らかにしました。またネオクリンに点変異を導入することで強い甘味タンパク質を世界で初めて創出した結果は、味覚生理学から食品科学まで幅広い領域の研究者に大きなインパクトを与えました。また、これらの解析で確立した味覚受容体を用いて味の強度を測定する技術は、いわゆるヒト味覚計量デバイスの開発へとつながり、味強度の数値化・科学的な味設計への利用を目指す技術として、産業界から大いに注目されております。