長澤寛道教授が、生物有機化学の研究における功績により、平成24年春の褒章で紫綬褒章を受章されました。
長澤先生は、甲殻類、軟体動物、藻類、魚類、サンゴ、昆虫等を対象に、それぞれの生物が示す特徴的な生命現象を解く鍵となる生理活性物質に関する研究を行ってきました。特に、バイオミネラリゼーションに関する研究では、それまで主に鉱物学や結晶学の手法で行われていたバイオミネラリゼーションの研究分野に、生物有機化学的手法を導入し、無機鉱物の結晶に微量含まれる有機物質の中に、バイオミネラリゼーションを制御する生理活性を有する物質を見出し、得られた有機物質を基盤としてバイオミネラリゼーションの全体像を解明することを目指す独創的な研究を展開しました。その結果、アコヤガイにおいて真珠の結晶ができる仕組みを、特定の炭酸カルシウム結晶に結合するタンパク質を発見しその機能を解析することで明らかにした他、魚の耳石やザリガニの外骨格の形成等に関して数多くの優れた成果をあげました。また長澤先生は、甲殻類のペプチドホルモンに関する研究において、クルマエビから発見した新規ペプチドホルモンの構造と機能に関する研究を行い、エビ類のペプチドホルモンに関する研究の礎を築きました。これらの成果は、二酸化炭素の固定や甲殻類の養殖技術への応用へとつながっています。
長澤寛道 研究科長