別府輝彦名誉教授が微生物利用学の領域に分子生物学的知見と手法を導入し多様な研究成果を挙げた業績により文化功労者として顕彰されました。


別府輝彦東京大学名誉教授

別府先生は1961年に本学大学院化学系研究科農芸化学専門課程博士課程修了後ただちに本学農学部助手に着任され、1969年に助教授、1977年に教授に昇任されました。1994年に本学をご退官後、2009年まで日本大学教授を務められました。別府先生はこの間、一貫して発酵学・応用微生物学分野の研究・教育に尽力されました。東京大学における初期の研究活動においては、カビのアロイソクエン酸発酵の発見、コリシン蛋白の作用機作の解明等の新しい成果を挙げられました。研究室を主宰された際には、いち早く遺伝子組換え技術を導入しチーズ製造酵素キモシンの微生物を利用した組換え生産に成功されましたが、これは高等動物遺伝子をクローン化した我が国初の例です。別府先生はさらに、放線菌や酢酸菌等の工業微生物の遺伝学的解析、X線結晶構造解析を利用したタンパク質機能の解明、真核生物の細胞周期を阻害する微生物由来新規生理活性物質の単離と作用機構の解明、共生を基礎とする微生物生態系の解析等、幅広い研究を行い多くの業績を挙げられました。これらの独創的な研究業績により、日本農芸化学会賞、国際微生物学会連合有馬賞、アメリカ工業微生物学会Charles Tom Award、日本学士院賞等を受賞され、2005年には日本学士院会員にも選定されました。また、すでに紫綬褒章、瑞宝重光章を受章されています。

別府先生は東京大学生物生産工学研究センターの初代センター長を務められ、学外においても財団法人バイオインダストリー協会、社団法人日本農芸化学会、日本放線菌学会等の会長を歴任されました。さらに国内外の学術審議会専門委員や国際会議の組織委員・運営委員を数多く務められ、我が国のみならず世界の発酵学・応用微生物学の発展に大きく貢献されました。別府先生は2007年度から本年3月まで続いた文部科学省大規模研究開発事業「ターゲットタンパク研究プログラム」のプログラムディレクターを務められるなど現在もお元気で幅広く活躍されています。