生産・環境生物学専攻
 難波成任教授

 

 大学院農学生命科学研究科 生産・環境生物学専攻の難波成任教授が日本学士院賞を受賞されました。日本学士院賞は明治43年に創設され100年以上の歴史を誇り、 学術上特に顕著な研究業績に対して与えられる賞であり、ノーベル賞受賞者が多数名を連ねる我が国で最も権威ある学術賞のひとつです。

 受賞対象の研究題目は「植物病原性細菌ファイトプラズマに関する分子生物学的研究」です。難波教授は本研究科植物病理学研究室において世界に先駆け発見された植物病原細菌ファイトプラズマに初めて分子のメスを入れ、分子系統分類上の位置を明らかにしました。次いでその全ゲノム配列を解読し、ファイトプラ ズマが究極の退行的進化を遂げた微生物であることを明らかにしました。

 得られたゲノム情報にもとづく分子生物学的研究によって、感染植物の篩部に寄生したファイトプラズマが、栄養分を収奪するほか、天狗巣症状を引き起こすTENGUペプチド、花の葉化症状を引き起こすファイロジェンなどの特異的病原ペプ チドを分泌産生することを見出し、その病原性誘導機構を解明しました。またその感染が、ヨコバイなどの吸汁性昆虫の特定の種によって媒介されるしくみを究 明し、それまで不明であったファイトプラズマ病の全容を明らかにしました。

 さらに、ファイトプラズマ病は途上国を中心に世界中で農業生産に甚大な被害 をもたらしていますが、感染植物を早期診断する迅速・簡易・高感度・安価かつ冷凍・冷蔵の不要な診断キットを開発・実用化しました。これにより輸送コストを削減、携行を可能にし、電源・設備の不十分な環境での長期保存や現場での検査を可能にしました。

 これらの研究業績は生命の理解を深め、植物病の根絶に大きく貢献するもので あり、学術上・応用上寄与するところが大きく、世界中で高く評価されています。 授賞式は6月12日に東京・上野の日本学士院にて行われる予定です。

(生産・環境生物学専攻 准教授  山次 康幸)

日本学士院賞や受賞理由の詳細についてはこちらを御参照ください。
http://www.japan-acad.go.jp/japanese/news/2017/031301.html