東京大学 大学院 農学生命科学研究科・農学部 広報誌『弥生』Vol.76 (Spring 2023)
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6詳しくは、東京大学 大学院農学生命科学研究科 森林科学専攻http://www.fr.a.u-tokyo.ac.jp/農学はいま、持続可能な社会の実現に欠かせない実践学となっています。ここではインタビューを通じて、農学生命科学研究科に学ぶ現役学生と、弥生キャンパスを巣立った先輩たちのいまをご紹介していきます。Interviewsあなたはいま、何をしていますか?Why have you chosen Department ofForest Science ?私が森林に興味を持ったのは大学入学後、北海道の演習林での体験プログラムに参加したのがきっかけです。実は、入学前は東大にこれほど広い演習林があることを知りませんでした。東大が保有する土地の99%は森林であり、その広さは国土の0.1%にも及びます。せっかくならこの広大な森林を活かせる研究をしたいと素直に思いました。森林植物学研究室に入ったのは、福田健二先生の授業が面白く、先生の下で学びたいと考えたからです。現在は雪の下に生息し、樹木を枯死させる病原菌の研究をしています。通常、樹木はこうした病原菌を避けるために、倒木の上で次の世代が更新されます。しかし、近年の気候変動などにより、生態系も大きく変化し、将来的には植物と雪の下の微生物の関係も変わっていくことも考えられます。また、病原菌に限らず、雪の下の微生物については解明されていないことがたくさんあります。解明されていないから、研究のしがいもあるし、なんらかのかたちで私の研究が地球の未来に役立てばと思っています。小学生の頃から地球温暖化の問題に関心を抱き、このままでは地球は大変なことになるという想いがありました。同時に温暖化防止には森林が大きな役割を果たすことを知り、高校時代には東大の農学部に進み、森林の研究をしたいと考えるようになりました。東大を選んだのはこの分野の研究では日本一だと判断したからです。現在は、ボルネオ島で森林と大気との間でどのようにエネルギーや物質が交換されているかを研究しています。ボルネオ島では森林破壊が進み、天然林の伐採後にアブラヤシ農園を造っています。私たちは天然林とアブラヤシ農園の双方に気象観測タワーを設置し、森林破壊のインパクトを調べています。例えばアブラヤシ農園は天然林に比べ、1年間に林内に蓄えられる炭素の量が大幅に減少していました。また、天然林はエルニーニョ現象による乾燥に対して脆弱なことも分かりました。今後は研究対象のスケールを広げ、人工衛星データなども駆使しながら、東南アジア全域の森林についての議論ができるような研究をしていくつもりです。森林植物学研究室 2021年博士課程進学森林経理学研究室 2021年修士課程進学中国の大学に在籍していた頃、姉と日本を旅行しました。日本の大学で学びたかった私は鎌倉の鶴岡八幡宮に参拝した際、お願いをしました。「どうか次に日本に来るときは留学の夢が叶っていますように」。その後、森林に関心があった私は龍原哲先生の論文を読み、ますます日本で学びたくなりました。それも東京大学の龍原先生の下で。その夢が実現したわけです。研究室の先生はみんなやさしく、日本語が下手な私の話も真剣に聞いてくれます。他の研究室の先生も私の疑問に対し、丁寧に答えてくれます。私の研究課題は森林経営計画の策定です。森林は木材の生産以外に、土壌保全、水源涵養、生物多様性保全、地球環境保全など多面的な機能を有しており、森林経営計画はこれらを考えながら策定しなければなりません。現在、中国では環境改善のため、大規模な植林や保全林の造成が進んでいます。日本で学んだことを中国での持続可能な森林経営に役立てたいと思います。森林生物地球科学研究室 2019年博士課程進学広大な演習林を活かした研究を雪の下の微生物を解明する日本で学ぶのが夢だった母国の森林経営に貢献したい地球規模の森林研究をしたい地球温暖化の関心は小学生の頃から岩切 鮎佳 Ayuka Iwakiri蒲 坤 Pu Kun羽田 泰彬 Yoshiaki Hataなぜ森林科学専攻を選んだの?

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