東京大学 大学院 農学生命科学研究科・農学部 広報誌『弥生』Vol.79(Fall 2024)
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大■■黒■■俊■■哉■東京大学大学院農学生命科学研究科長・農学部長中嶋 康博 人類の生命や健康を守ること。そして暮らしや社会を安定・発展させること。それは農学が絶え間なく取り組んできた究極の目標です。 小麦の多収性品種の開発に取り組んだ農学者のノーマン・ボーローグ博士が、歴史上で誰よりも多くの命を救った人物として1970年にノーベル賞を受賞したことは有名です。ただその成果は、育種改良や新品種の普及における多くの人々との連携によって達成されたものです。本号で紹介した農学部関係者の取り組みも、現地の住民、生産者、事業者、行政、国際機関、そして研究者が互いに関係を取り結ぶこと、不断に協力し合うことで、目標に向かって前進しています。 東京大学は「東京大学憲章」の前文において、「国籍、民族、言語等のあらゆる境を超えた人類普遍の真理と真実を追究し、世界の平和と人類の福祉、人類と自然の共存、安全な環境の創造、諸地域の均衡のとれた持続的な発展、科学・技術の進歩、および文化の批判的継承と創造に、その教育・研究を通じて貢献する」と宣言しておりますが、農学部の活動の多くはまさにこのことを体現した尊いものだと誇りに思っております。 克服すべき課題の存在に気づくことがこれら挑戦への第一歩ですが、学生諸君はその重大さと困難さもあわせて理解してくれていることが記事からよく分かります。農学部ではその気づきを促すためにも、実習等を通じて教育と研究を結ぶことを大切にし、成果を上げてきたと自負しています。生圏システム学専攻 緑地創成学研究室栽培技術の導入・普及に向けた遊牧民参加による播種作業教授(a)図2 モンゴルでの草原回復プロジ (a)パイオニア植物として荒廃草原へ ■■■■■■中コムギ、右:イネ、スケール(白い (Borolutuya et al. Front Plant (b)導入植物の栽培技術を確立する Yayoi HighlightCombating DesertificationFrom the Dean’s Office2 世界の乾燥地で進む砂漠化は、生物多様性・生態系サービスの低下や、気候変動との相互作用を通じてグローバルな環境にも影響を及ぼします。私たちは、砂漠化した土地の再生と持続可能な利用を目指し、多様な連携による取り組みを進めています。結ぶ砂漠化に立ち向

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