東京大学 大学院 農学生命科学研究科・農学部 広報誌『弥生』Vol.79(Fall 2024)
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詳しくは、東京大学 大学院農学生命科学研究科 応用生命化学専攻https://www.bt.a.u-tokyo.ac.jpInterviewsあなたはいま、何をしていますか?6Why have you chosen Department of Applied Biological Chemistry ?農学はいま、持続可能な社会の実現に欠かせない実践学となっています。ここではインタビューを通じて、農学生命科学研究科に学ぶ現役学生と、弥生キャンパスを巣立った先輩たちのいまをご紹介していきます。ある日を境に、それまで美味しいと思っていなかったビールを大好きになりました。上京した母と居酒屋で焼き鳥を食べたのですが、このとき飲んだビールがとにかく美味しかった。焼き鳥との取り合わせも良かったのだと思います。つまり、経験依存的に食の好みは変わる。食べ物の記憶が脳にどう保存されるかで、好き嫌いも変わるということです。今はマウスを使った実験で、食べるときの神経活動を調べています。ゆくゆくは人が食べ物を美味しいと感じる脳のメカニズムを解明し、多くの人の健康な食生活につながればと思います。僕はもともと農学部志望ではありませんでした。工学部に行けず、心機一転、農学部に入ったのですが、これが大正解。目の前の景色が変わり、自分にふさわしい研究テーマに出合いました。「一勝より一生」という言葉があります。目先の勝利より長い目でものごとを判断しろという意味に解釈しています。失敗や負けから学ぶものがたくさんあるのは研究も人生も同じです。将来は民間企業で研究を続けられたらと考えています。現在はマウスにおいてフェロモンによって制御される社会行動の研究をしています。もう少し具体的に言うと、子マウスに対し親ではないオスのマウスが攻撃をする行動に着目し、それを引き起こすフェロモン受容体を同定、その受容体を介した情報がどのように脳で処理され、行動を引き起こすのかを研究しています。マウスでわかった知見がそのまま人間に応用できるわけではありませんが、本能行動を司る脳神経回路は種間での保存性が高いと考えられています。将来的にはマウスで得られた知見が、人間の攻撃性や子育てなどの社会行動の理解に応用できる可能性はあると考えています。もともと私は生き物が好きで、高校時代はサンショウウオの生殖行動の研究をしていました。野生生物とモデル生物の両方を対象にした経験から、生物にはいろんな種で普遍的な社会行動もある一方、その種による特異的な行動もみられるということが面白いと感じています。将来的には、生物の社会性がどのように進化してきたのか、ということにアプローチするために研究を続けたいと思っています。実は他大学の理工学部で学んでいました。そんな私が農学を志すきっかけにとなったのが、大学3年のときに読んだ近藤亨さんの本。近藤さんは日本の伝統農法でネパールの山岳地を緑に変え、現地の人々の暮らしを豊かにされた方です。私は近藤さんの活動に感銘を受けると同時に、農学の魅力を知りました。現在はバングラデシュの稲の品種改良の研究をしています。バングラデシュでは、有害元素であるヒ素の土壌・地下水の汚染が深刻であり、そこで育つお米を食べることで、甚大な健康被害が生じています。皮膚ガンなど死因の半数はヒ素に由来するともいわれるほどです。品種改良は10年、20年スパンで行なわれ、今は品種改良の材料を確立する段階。候補の遺伝子はいくつか見つかってきたので、この中のどれかがヒ素を減らす機能を持っていれば、品種改良は一気に進むはずです。将来的にはJICAなどの国際機関に入って、農業の力で社会課題を解決していきたいと考えています。近藤さんの本に書かれていた「安易な道を選ぶなかれ、常に弱者の味方たれ」という言葉は座右の銘です。栄養化学研究室 2023年博士課程進学生物化学研究室 2023年博士課程進学植物栄養・肥料学研究室 2023年修士課程進学生物の行動メカニズムを解明する記憶と食の関係を明らかにアメリカに研究留学したい一勝より一生常に弱者の味方たれ農学の力で社会課題を解決する福山 雄大 Yudai Fukuyama神戸 朱琉Akari Kanbe中村 颯志 Soshi Nakamuraなぜ応用生命化学専攻を選んだの?

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