東京大学 大学院 農学生命科学研究科・農学部 広報誌『弥生』Vol.80 (Spring 2025)
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□吉田丈人 それぞれの地域で人々が自然の恵みと災いに向き合い築いてきた「知」を、現代の社会課題の解決に活かす取組みが進んでいます。私たちは、社会の多様な主体と連携しながら、自然の恵みを活かし災いを避けるための学術研究と実践の取組みを進めています。東京大学大学院農学生命科学研究科長・農学部長中嶋 康博生圏システム学専攻 保全生態学研究室□□□□□□教授NatureandBiodiversityin daily lifeYayoi HighlightFrom the Dean’s Office 本号表紙のニホンオオカミの迫力ある写真に驚かれた方も多いのではないでしょうか。農学生命科学研究科の「お宝」の一つです。私たちを訪問された方々に時間があればご覧いただくようにしてきました。昨年、国立科学博物館にニホンオオカミの剥製がもう一体あることが明らかになりましたが、それを「発見」した中学生の方はその数年前に私たちの剥製を見学されていたそうです。ご縁をつないでいただきました。 もともとは森林科学専攻の森林動物学研究室が所有されていたもので、ある時から研究科がお預かりしています。農学部創立150周年を機に、後世へ引き継ぐため、保存状態の確認と本体のメンテナンスを今回のYayoi Caféにご登場いただいた尼ヶ崎さんにお願いしました。以前よりこのニホンオオカミは素晴らしいガラスケースに保管されていますが、そのセットアップはご尊父である先代の尼ヶ崎さんの手によります。 世界に現存する剥製は五体だけなので、今後の管理をどうすべきか思案しました。本学総合研究博物館の遠藤秀紀教授にご意見を聞いたところ、人類の宝として大事にする二つの道があるとのこと。一つは永遠に残すために管理された倉庫で保管する道、もう一つは仕舞い込まずにできるだけ皆さんに見ていただく道です。私たちは中間の道で大切に「遺す」ことにし、普段は覆いを掛けて光が当たらないようにしながら、これまでと同様に本研究科を訪問された方々にはご覧いただけるようにしつつ、全身を3Dスキャンした画像を農学部のWEBサイトで公開することにしました。ご自身で画像を回転できますので、ぜひご覧ください。2 遺 す暮らしのなか 自然と生

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