□三坂巧□□応用生命化学専攻生物機能開発化学研究室□□□Frontiers 1昆布から取ったうま味たっぷりの昆布だし4 詳しくはこちら、生物機能開発化学研究室ホームページ: https://webpark1101.sakura.ne.jp/味覚は動物にとって、食べ物の「おいしさ」を決める感覚として機能しています。最近の研究から、味覚で検知できる呈味物質が、それぞれの動物ごとに異なっているということが明らかになってきました。 食べ物を口に入れると、それぞれの食べ物に特有の味を感じることができます。舌の上にある味細胞という特殊な細胞には、味覚受容体という呈味物質のセンサーが存在しており、このセンサーの働きによって食べ物の味を感じることができるのです。 我々の研究グループでは、いろいろな動物が持つ味覚について、幅広く解析を行ってきました。シャーレの上で育つ培養細胞に、それぞれの動物に由来する味覚受容体を発現させ、そこに味物質を投与した時の細胞応答を測定することで、その動物が感じる味の強度を判定することができるのです。 人間は昆布だしに含まれる「グルタミン酸」というアミノ酸をうま味として感じており、うま味を感じることによって「おいしい」と判断しています。しかし古くから行われてきた様々な動物の行動試験から、「グルタミン酸」を好まない動物がいることもわかっていました。 前述の味覚受容体を使った評価法によりこの原因を探ってみたところ、人間以外の動物由来のうま味受容体では、グルタミン酸以外のアミノ酸に強く応答する場合が多いことがわかりました。またどのアミノ酸に応答するかというパターンも動物種ごとに様々であり、動物ごとに「おいしさ」が異なっていることを科学的に実証できたともいえます。 それぞれの動物の持つ味覚が科学的に明らかになると、例えばペットや家畜用の□の開発などにおいて、それぞれの動物ごとのおいしい□を作り出していくことが容易になっていくでしょう。顕微鏡で見た培養細胞の様子動物ごとに食べるものは様々それぞれの動物ごとにおいしいと感じる食べ物は異なっている。上:森の中で葉っぱを食べるチンパンジー(早川卓志博士より提供)。下:調理された肉料理(合鴨肉の赤ワイン煮)。昆布だしにはグルタミン酸という「うま味物質」が含まれています。約120年前に本学理学部の池田菊苗教授によって、その存在が発見されました。ヒトやマウスなど、動物に由来する細胞を生体外で増殖できるようにしたものを指します。シャーレの中に糖、アミノ酸、ビタミンなどが入った培地とともに培養細胞を入れ、37℃に保温したインキュベーターで飼育することが一般的です。分子生物学や細胞生物学の分野で、生体のモデル系として使用されています。口の中で感じることができる味のうち、味細胞で感じられる味のことを基本味といいます。「うま味」は5種類ある基本味のうちの一つで、「甘味」、「酸味」、「塩味」、「苦味」とならぶ、味の構成要素の一つです。基本味は栄養素の存在と結びついていることが多く、「うま味」が感じられる食べ物には一般的にタンパク質が含まれています。准教授培養細胞って何ですか?「うま味」って何ですか?教えて!Q&A農学最前線On The Frontiers動物ごとに変わる「おいしさ」
元のページ ../index.html#4