プロフィール

安藤 光義

安藤 光義

ANDO Mitsuyoshi

専攻 農業・資源経済学専攻 Department of Agricultural and Resource Economics
研究室 農政学研究室 Agricultural Structure and Policy
職名 教授 / Professor

一般の方へ向けた研究紹介

農村の現場から政策を捉え直す “事件は現場で起きているんだ(踊る大捜査線)”

【研究の背景】
 

日本の農業は労働力の高齢化と減少が進んでおり、耕作できない農地が増えています。こうした状況を打開するための政策を考える必要があります。農地を耕す人が減っているのですから、残った経営に農地を引き継いでもらうことができれば規模拡大が可能となります。しかし、日本列島は東西南北に細長く連なっており、平野部から山岳地帯まで多様性に富んでいるため、全国一律の政策は難しいです。地域的多様性を反映した政策を推進する必要があり、それを実現するための研究に取り組んでいます。

【研究の内容】
 

中央で策定された政策が農村の現場でどのように実施され、効果をあげているのか、うまくいっていない原因は何かを、現地調査を通じて明らかにします。農業者や政策を遂行する市町村を訪ね、聞き取りを行い、現場から見える政策はどのようなものなのかを把握します。そうした視点から政策を評価し、提言を行うことになります。

【今後の展望】
 

団塊の世代のリタイアによって日本の農業はさらに大きく変化することが予想されます。それを正確に観察し、各地域で起きている新しい動きに基づく政策を提案できればと考えています。

教育内容

常に問題意識と仮説をもって「こと」に当たる “間違った仮説でもいい、たくさん立てる(羽生善治)”

【教育活動内容】
 

自然の制約を強く受ける農業の時間軸は非常に長く、過去が現在を大きく規定しています。「農政学」では人口爆発を可能にした産業革命以降の農業と政策の展開過程を解説します。「比較農業政策論」では先進国の農業政策、農地制度の推移の比較を通じて共通性と特殊性を明らかにします。「卒業論文」では現地調査を通じた「事実」の発見を目指しています。大学院進学者は農林業センサスなどの統計の分析も行い、その数字が意味する内容を正確に解釈する力を身につけてもらいたいと考えています。

【人材育成の目標】
 

自分の問題意識から社会を捉え、データの分析と現実の観察から、地に足の着いた見解をロジカルに表明することができる人材を育てることが目標です。論文指導では教員と学生が「教える」「教わる」という関係ではなく、分析対象に向かって一緒にアプローチする関係を築くことができればと思っています。

【人材輩出の実績】
 

研究室の性格かもしれませんが、大学院生は農林水産省をはじめとする国家公務員になる人が多いように思います。学部生の進路は多様性に富んでおり、ある学年は総合商社ばかり、ある学年は金融機関ばかりといったこともあります。

共同研究や産学連携への展望

農村の現場の視点から政策を読み解き、実践につなげます

【取り組んでいる社会問題】
 

地域社会と農地を守るために設立された集落営農が、法人化していても世代交代ができず、解散の危機を迎えています。この問題は中山間地域で特に深刻です。集落を拠り所とした農業・農村政策のあり方が問われています。こうした危機にある集落営農の現状をアンケート調査と現地調査から把握し、今後の方向を検討しています。人口減少で都市が縮退しているにもかかわらず開発・転用によって失われている都市農地を残すための制度的な課題や税制(特に相続税)に関する研究、農地集積の推進方法の検討、日本の農業の全体像を把握する農林業センサスの分析も行っています。

【現時点での課題に対する進捗】
 

山口県の集落営農法人を対象としたアンケート調査結果を分析し、その結果を県と農協に提供しました(2021年度)。2022年度は学生と一緒に群馬県の集落営農の調査研究を行っています。都市農地問題が発生の理由とその後の土地制度・税制をまとめました(http://www.minjiho.com/shopdetail/000000001280/)。センサス分析も公刊しました(https://www.u-tokyo.ac.jp/biblioplaza/ja/E_00105.html)。

【今後の展開・展望】
 

当面は集落営農や都市農家のアンケート調査分析、改正された農地制度の現場での適用に際しての課題の解明などで地域に貢献したいと考えています。お気軽にお声かけください。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  農業政策、構造政策、農地制度、集落営農、都市農地、センサス、アンケート調査
キーワード2  :  耕作放棄地、遊休農地、相続税、農地転用、担い手、農業構造