プロフィール

榎本 有希子

榎本 有希子

ENOMOTO Yukiko

専攻 生物材料科学専攻 Department of Biomaterial Sciences
研究室 高分子材料学研究室 Laboratory of Polymeric Materials
職名 准教授 / Associate Professor

一般の方へ向けた研究紹介

植物から環境に優しい新しいプラスチックを創る!

 プラスチックは私たちの生活に不可欠な素材となりましたが、同時に石油資源の枯渇や二酸化炭素の排出による地球温暖化の加速、海洋ゴミやマイクロプラスチックのような環境汚染の問題も懸念されるようになりました。その解決策の一つとして、植物などのバイオマス資源を原料とするバイオマスプラスチックや環境中の微生物により二酸化炭素と水にまで分解される生分解性プラスチックに期待がよせられています。私は、木材の主要構成成分であるセルロースやヘミセルロース、微生物や緑藻などが産生する様々な多糖高分子に、適切な化学修飾を施した誘導体を合成することで、新しいバイオマスプラスチック材料にする研究をしています。また、木材のもう一つの主要構成成分であるリグニンとよばれる不定形芳香族ポリマーの分解物として得られるバニリンなどの芳香族化合物を重合によって高分子量化し、高耐熱性や生分解性も有するバイオマスプラスチック材料にする研究もしています。今後は、新たなバイオマス原料を使い、優れた耐熱性や機械特性、生分解性、易解体性、リサイクル性など様々な機能や性能を有する新しいバイオマスポリマーの合成やその材料化、分解機構などの研究を進めて、環境負荷が小さく持続可能な新素材の開発に挑戦したいです。

教育内容

合成でつなぐ~バイオマスと環境に優しい新素材~

 講義や学生実験は、木材を中心とする植物バイオマスの化学構造や利用法、高分子の合成法や化学構造の解析方法、成形加工、構造物性解析について、基本的な内容から最近の研究も学べる内容にしています。バイオマスという自然の叡智に学びつつ、つかう責任だけでなくつくる責任も果たすためにはどうすればよいかもぜひ学び考えていただきたいです。私の専門は、有機合成、高分子合成です。環境に優しい新しい素材の開発には、原料の選定や入手、新しいポリマーの合成法の確立が必要なだけでなく、それが必要な性質を持った材料として十分に使えるのか、コストや持続可能性、などたくさんの課題があります。そのような中でも、新しいポリマーを分子設計し、日々試行錯誤しながら合成するところ、思いもよらない新しい性質が出てそのメカニズムを明らかにすることができたりするところが、挑戦しがいがあり面白いところでもあります。学生さんには、それぞれの興味関心に応じて、社会的のみならず学術的にも意義のあるテーマを提案しています。研究を通じて、自らの経験や考え、あるいは好奇心や探究心を発展させ、新しい素材の開発やアイデアを形にする難しさや楽しさを、実際に手を動かしながら経験していただきたいと思っています。

共同研究や産学連携への展望

バイオマスならではのサステイナブルマテリアルの創製を

 木質資源を用いて持続可能な社会の構築に貢献できるような研究を目指しています。これまでセルロースやヘミセルロースをはじめとする多糖類をエステル化して得られる誘導体の合成と材料化や、リグニンの分解物でもあるバニリン酸を二量体化して得られるジバニリン酸からポリエステルやポリアミドなどの高耐熱性芳香族バイオマスプラスチックを得ることに成功しています。最近では、ジバニリン酸を用いることで生分解性も付与したバイオマスプラスチックの合成や生分解性の評価、動的共有結合を導入したビトリマーの合成などにも取り組んでいます。植物や天然資源から得られる化合物やポリマーは、コストや性能面で石油由来プラスチックを超えるのがとても難しいですが、バイオマスならではの特性を発現し、材料としても十分に利用できる新しい素材が作れないか、日々考えています。バイオマスからの抽出や微生物・酵素による合成で得られる有用化合物のバイオマスプラスチックの原料としての可能性、新しいポリマーの合成やフィルムや繊維などへの材料化、様々な環境における生分解性の評価や生分解性材料、リサイクル材料としての展開などの分野で、学外の方と連携できると嬉しいです。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  バイオマス、木材、セルロース、ヘミセルロース、パラミロン、グルコマンナン、多糖、リグニン、バニリン、ジバニリン酸、芳香族化合物、合成、バイオマスプラスチック、生分解性プラスチック、材料
キーワード2  :  石油資源の枯渇、温暖化、森林資源の利用、カーボンニュートラル、プラスチックごみ、海洋汚染、マイクロプラスチック