プロフィール

藤原 徹

藤原 徹

FUJIWARA Toru

専攻 応用生命化学専攻 Department of Applied Biological Chemistry
研究室 植物栄養・肥料学研究室 Laboratory of Plant Nutrition and Fertilizers
職名 教授 / Professor

一般の方へ向けた研究紹介

植物の栄養が人類を支えている。

 私たちの衣食住は植物に依存しており、植物は環境の維持に不可欠です。植物が地球のかなりの部分を覆っているのは、植物が水、光と土壌からの14種類の無機栄養があれば生育できるからです。しかし、多くの土壌では無機栄養の一部が十分に含まれておらず、植物は十分に成長することができません。このため人類は文明が起こって以来、土壌に栄養を供給し植物の成長を促進して食糧などを得てきました。現代の人口を支える食糧生産を得るには肥料としての栄養の供給が不可欠ですが、肥料を与えることは地球に負荷を与えてもいます。植物の栄養供給を効率化し少ない肥料で植物を育てることが求められています。
 これを実現する一つの方法は、植物の栄養吸収を担うタンパク質を見出し、その能力を高めることです。植物が必要な無機栄養であるホウ素とモリブデンについて、植物から世界で初めて吸収を担うタンパク質を見出しました。また、その能力を高めることで少ない栄養でも生育する植物を作り出す技術を開発しました。
 これらの研究から、植物の巧みな栄養吸収や調節の驚くべき仕組みがわかってきておおり、新たな発見や技術開発を目指して研究を進めています。

教育内容

植物の栄養研究は面白く役に立つ

 植物は14種類の無機栄養それぞれに異なる輸送の仕組みを持っており、また栄養条件によって輸送が巧みに調節されています。私たちはその巧みな仕組みを明らかにしてきました。また、最近では植物が土壌中で栄養源のある方向に向かって根の伸長方向を変える現象を発見し、栄養屈性と命名しました。光と水に対する植物の屈性はダーウィンが19世紀に記述していますが、栄養に対する屈性は知られていませんでした。
 私の担当する講義や実習では、植物の栄養吸収の人類社会との関わりから、その巧みな仕組みまで、最新のトピックを交えながら紹介します。植物の栄養吸収は農業生産における重要性だけでなく、地球の物質循環という観点で見ても大きな影響を及ぼすプロセスです。また、植物は毒物を栄養と間違えて吸収してしまので人類を含めた動物に植物を経由して吸収される毒物が悪影響を与えることもあります。授業や研究室での活動を通じて、皆さんには植物の栄養吸収の面白さと幅広い社会影響を理解、体験していただきたいと考えています。卒業生修了生の進路は様々ですが、博士号を取得した方々は大学教員や公的、私的研究機関に務める方が多いです。学位論文のタイトルは研究室のホームーページにあります。

共同研究や産学連携への展望

植物の栄養研究を社会に役立てる。

 植物の栄養や肥料に関わる様々な問題の解決を目指しています。取り組みの例としては、肥料が少なくても十分な収穫の得られる作物品種の開発、土壌微生物の活性を促進する作物の開発、植物の栄養状態の画像による解析、効率的なバイオマス生産、施肥や栽培管理による栄養欠乏症の防止や成長促進などが挙げられます。

研究概要ポスター(PDF)

植物栄養・肥料学研究室ホームページ

最近のプレスリリース

植物に化学工場を作る構造の発見 ――キュウリブルームレス変異株の解析から――
栄養屈性により曲がる根の内側と外側で見られる植物ホルモン応答
植物リボソームの栄養濃度の感知機構を解明――栄養条件に応じた生育促進の巧みな仕組み――
栄養の吸収・利用効率を改善する遺伝子の発見 ――低肥料栽培への利用が期待――
シロイヌナズナのリボソームタンパク質の変異が、地上部のカリウム蓄積に影響を及ぼし、根の形態変化も引き起こすことを発見
イネの分げつは種子の中の異なる細胞に由来し、変異原処理したイネ個体からは数種の異なる変異群を持つ種子が得られることを発見

キーワード

キーワード1  :  植物、作物、細胞、シロイヌナズナ、イネ、ソルガム、ダイズ、ミヤコグサ、ハクサイ、ダイコン、ホウ素、窒素、リン酸、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、モリブデン、銅、カドミウム、ヒ素、ニッケル、トランポーター、輸送体、発現制御、スプライシング、ノンコーディングRNA、転写制御、翻訳制御、リボソーム、リボソームタンパク質、mRNA seq、 Ribo seq、 変異株、分子遺伝学 GWAS、栄養屈性、数理モデル、長距離輸送、低肥料耐性、ネットワーク解析、圃場、栄養特性改善
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