プロフィール

古井戸 宏通

古井戸 宏通

FURUIDO Hiromichi

専攻 森林科学専攻 Department of Forest Science
研究室 林政学研究室 Laboratory of forest policy
職名 教授 / Professor

一般の方へ向けた研究紹介

歴史から学ぶ森林管理の「規範」

研究の背景
 

森林が保全・管理されるべき水準について何らかの方法で一定の知見がえられたとして、次に問題になるのは、そのために誰が責任をもつか、究極的には誰が費用を支払うかという問題です。これは「規範的」な問題であり、理論的に何が「正しい」と言うことは困難です。そこで、時代や国・地域によって、社会における森林管理の規範がどう変化したかを、歴史の現実に即して考えてみたいところです。

研究の内容
 

博論では、森林の維持管理費用を流域下流部の自治体が負担するという事例、および、保安林に指定された私有林所有者が森林法にもとづく損失補償を受けた事例について、実証的に論じました。
 その後、研究対象を欧州に拡大し、公法学・歴史学・会計学の分野の碩学との交流を通じて、枠組みを作った後、具体的な存在として、近代林政が作られた時期の「森林監守人」に焦点を当てて研究しています。

今後の展望
 

所有者不明森林や管理放棄といった問題は、経済的な効率性だけでは語れない難しい問題です。私の研究は、迂遠にみえるでしょうが、こうした問題の根本に横たわっており避けては通れない分野だと考えています。

教育内容

山村や森林の中に、社会の問題を見つけよう.

教育活動
 

「森林政策学」(学部)、「外国森林政策学」「林政学特論」「林業史」(大学院)などを、他の教員と連携しながら講じています。学部では日本の近代林政を中心に、大学院では、国内外や19世紀後半以降の歴史的変遷を中心に、それぞれ学ぶ場を設けています。

人材育成の目標
 

学部講義では、日本の近代林政について公共部門がなぜ係わってきたかを学びます。ゼミや大学院ではさらに視野を広げて論じます。これらを通じて、森林をめぐるさまざまな社会問題について一定の見識をもち、経済学・歴史学・会計学などの視点や考え方をもった人材を育てたいと考えています。

人材輩出の実績
 

以下に、主査を務めた博士学位論文を挙げます。これらに共通することは、森林や山村をとりまく人文社会科学的な理論的課題を、実例の分析により解き明かすという点にあります。抽象論としては難しい問題を、森林・林業・山村といった場において実証することで、可視化することができる好例です。
『山村の生活様式の変化に伴う生活排水処理の変遷と現状の課題』(髙田 乃倫予)
『中国における集団林権制度改革政策の現状と課題』(呉 晨陽)
『尾瀬国立公園における施設整備・管理の実態-木道、トイレ、ビジターセンターを中心として-』(趙 楊然)
『人的被害の軽減に向けた土砂災害対策のあり方-住民の関わり方に着目して-』(千葉 幹)
『環境 NPO の活動実態からみえる社会的役割と持続可能な活動展開に向けての課題―足尾銅山跡地で活動する森林ボランティアを事例に』(劉 妍)

共同研究や産学連携への展望

森林をめぐる社会の問題を、根本から見つめています。

 林政学研究室は、1893年に「林学第三講座」として誕生して以来、時代の要請に即して、さまざまな研究を蓄積してきました。法制度や経済学的研究が主要な分野なので、多くは、森林法や環境法など、林野法制にかかわる公的部門や非営利団体の要請に即した研究でした。しかし、企業にも、社会的責任が求められるようになり、近年ではより深い知見に根ざした活動が評価されるようになりました。私はこの研究室に責任をもつ教員として、蓄積してきた研究資料を広く利用に供するための研究室整備を第一の課題とし、基礎的課題から応用的課題まで、多くの分野に取り組む中で、社会の皆様との接点を常に考えて居るところです。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  森林政策(林政)、森林法、保安林制度、林地保全、森林所有、森林資源勘定、比較林政論、法制史、環境政策、公共経済学、公法学、歴史学、会計学
キーワード2  :  森林破壊、林地転用、メガソーラー、森林管理放棄、林地相続、エロージョン