プロフィール

後藤 晋

後藤 晋

GOTO Susumu

専攻 附属演習林 The University of Tokyo Forests
研究室 森林圏生態学研究室 Laboratory of Forest Ecology
職名 准教授 / Associate Professor

一般の方へ向けた研究紹介

森林樹木の個体変異の理解と利用から、将来にわたって健全な森林生態系を維持し、気候変動の緩和につなげる

 森林樹木種は環境によって、樹形や葉のサイズ、開花時期などが大きく異なる個体変異を持っています。このような個体変異がなぜ、どのようにして生じるのかが研究の原点となっています。最近は巨大なゲノムを持つ北方針葉樹(特にトドマツ)の局所適応の遺伝的基盤の解明を通じて、見た目(表現型)とゲノム(遺伝子型)をつなげるような研究を行っています。また、その個体変異を積極的に利用する林木の育種にも興味を持っており、二酸化固定能の高いカラマツ類のゲノム選抜、苗木生産システムの精密化・高度化に関する研究も始めています。また、近年の気候変動に対して、二酸化炭素の主要な吸収源である森林樹木がどのような成長や生理的応答をするかについて、産地試験や移植実験などで明らかにするとともに、将来気候に応じた種苗の配布の在り方を検討するなど、健全な森林生態系が維持されることに貢献できるような研究を展開したいと思っています。

教育内容

文章を書くことの楽しさを伝えたい。社会的な課題をキャッチし、科学的な知見をもとに、自ら答えを出せるような人材を育成

 担当講義として、森林遺伝育種学(主担当)、森林生態圏管理学(分担)、造林学(分担)などがある。主担当である森林遺伝育種学では、単に関連する知識を教えるだけでなく、ある希少種の保全に関する会議において、どのような方針を取るべきかといったグループディスカッションを行ったり、もし自分がTV局のディレクターだったら、樹木の品種をどのようにプロデュースするかといった、実際に現実社会で問題になっているが、正解がない問題に対して何をどのように考えるかといったレポート課題を出すなど、自らの民間会社や地方公務員としての経験を活かした講義を行っている。
 人材育成の目標としては、文章を書く楽しさを伝えるとともに、論文として形に残すということの意義を伝えることを意識している。また、自分の研究領域だけでなく、社会の問題を幅広くキャッチし、それに対して科学的な知見をもとに自ら考えて、正解のない問題にも答えを出せるような人材育成を行いたいと思っている。
 人材輩出の実績としては、研究者2名、民間会社3名が自分が指導教員となった学生であるが、指導教員以外でも卒業論文、修士論文、博士論文等の指導に携わってきた。指導した学生の学位論文のタイトルは以下の通りである。

  • 博士論文:北方針葉樹トドマツの標高に沿った局所適応の実態解明と将来予測への応用
  • 博士論文:葉緑体SNPと核SSRマーカーで明らかにされたミャンマーにおけるチーク(Tectona grandis)の地理変異と遺伝構造(英文)
  • 修士論文:マイクロサテライトマーカーに基づくミャンマーにおける遺伝的多様性と遺伝的構造および他の原産国のチークとの比較(英文)
  • 修士論文:分子マーカーによるエゾマツ・トドマツの倒木更新の遺伝的プロセスの解明
  • 修士論文:二次林に生育するウダイカンバの心材形成と成長パターン
  • 修士論文:トドマツの標高適応に関連する形態生理特性の解明
  • 修士論文:広域産地データに基づく地球温暖化がダケカンバの生存と成長に及ぼす影響の評価(英文)
  • 卒業論文:北海道中央部の低標高地の地がき地におけるウダイカンバの更新実態

共同研究や産学連携への展望

気候変動の緩和に向けた健全な森林生態系の維持、人工林の生産性向上に向けた基礎的・応用的な研究

 将来の気候変動の緩和に向けて、健全な森林を維持すること、人工林の生産性を向上させることが極めて重要だと考えている。このため、基礎研究として、環境に適応するための遺伝的基盤の解明をゲノミクス、フェノミクス、トランスクリプトームなどで多角的に研究をしている。特に、北方針葉樹のトドマツについて、重点的な研究を行っている。応用研究としては、将来気候に合わせた森林樹木の種苗配布のあり方に関する研究、温暖条件での森林樹木の応答解明への研究を行っている。また、二酸化炭素吸収能の高い品種をゲノム情報から早期に選抜する、林木育種についての研究を進めている。さらに、苗木生産の高度化・安定化を図るために、従来法である挿し木、接ぎ木、コンテナ苗などを科学的に検証し、新しい苗木生産システムを開発したいと考えている。 北方樹木の一つであるエゾマツを対象として、エゾマツ早出し健全苗作成マニュアルを作成し、すでに公開している。

研究概要ポスター(PDF)

最近のプレスリリース

森林限界と南限地のダケカンバ苗木の生存率・成長率の低下はメカニズムが異なる

キーワード

キーワード1  :  北方針葉樹、ゲノミクス、局所適応、気候変動、温暖化実験、林木育種、苗木生産
キーワード2  :  気候変動、森林生産性、苗木生産