プロフィール

久本 洋子

久本 洋子

HISAMOTO Yoko

専攻 附属演習林 The University of Tokyo Forests
研究室 森林圏生態学研究室 Laboratory of Forest Ecosystem
職名 助教 / Research Associate

一般の方へ向けた研究紹介

竹の一生を科学する

研究の背景
 

竹はタケノコを食したり、かご・ざる等の材料に利用される有用植物ですが、近年は利用が減り、放置された竹林が問題となっています。一方、タケ類は67年や120年といった周期で一斉開花・枯死するという特異な生活史を持ちます。異なる環境に移植した株が同じ年に一斉に開花したことから、タケ類の開花は環境によらず遺伝的に制御されていることが推察されています。しかし、どのようなメカニズムで開花年になると開花するのかは明らかではありません。

研究の内容
 

タケ類の開花遺伝子を探し出し、それがいつどこで働くのかを解析することで一斉開花の分子機構の解明を試みています。具体的には、ハチク、モウソウチクなどの複数のタケで開花の様子や開花後の回復過程を調査するとともに、RNA-seq解析という方法で開花時期に働く遺伝子を網羅的に調べています。

今後の展望
 

この研究は、タケ類の開花を自在にコントロールできるような新しい増殖制御技術の開発に道を開くことを目指しており、将来的には「花咲かじいさんの灰」のように竹林に花を咲かすことが出来るようになるかもしれません。

教育内容

竹を通じて社会問題を考える

教育活動内容
 

附属演習林をフィールドとした農学部の実習や全学体験ゼミナールを担当しています。特に、千葉演習林で行っている「房総の森と生業(なりわい)を学ぶ」においては、竹細工体験を通して、竹材の活用や竹産業の現状について考えてもらうプログラムを実施しています。タケや竹林という対象を通じて、現在の日本の森林や林業における社会問題を考えてもらうきっかけになればと思っています。また、放置竹林問題についてや竹を身近に知ってもらうための講義なども行っています。

人材輩出の実績
 

これまでに、放置竹林問題に興味を持ってくれた学生さんとともにタケ類の生態学的な研究を行いました。具体的には、竹林拡大の要因となっている旺盛な地下茎の伸長について、光資源や養分の偏りや地下部の障害物がどのように影響するかを調べました。この研究の一部はBamboo Journalという雑誌にも掲載されました。現在、学生さんは森林科学で学んだことを社会に伝えるようなお仕事をしています。

共同研究や産学連携への展望

竹が抱える社会課題の解決へ

取り組んでいる社会問題
 

竹は有用植物ですが、近年、竹産業の衰退や後継者不足等により全国で放置竹林が増加し、林地への侵入・拡大や景観悪化などが問題となっています。竹林の駆除が試みられていますが、地上部の稈の伐採だけでは地中の地下茎が生き残こるため再びタケノコを出して回復してしまいます。そのため抜本的な防除手法の確立が求められています。

現時点での課題に対する成果物や進捗
 

そこで、放置マダケ林を試験地として除草剤の土壌散布と稈の伐採を組み合わせた手法を試行し、タケの抑制効果と植生変化を調査した結果、タケの再生を大幅に抑制でき、広葉樹林への転換が可能なことを示しました。

今後の進展に適用可能な技術や研究、展望
 

この研究はタケの効果的な防除方法の開発に繋がり、放置竹林周辺の森林等への侵入防止や適切な竹林管理に役立つと考えられます。

研究概要ポスター(PDF)

最近のプレスリリース

森林限界と南限地のダケカンバ苗木の生存率・成長率の低下はメカニズムが異なる

キーワード

キーワード1  :  タケ、竹、竹林、地下茎、周期性、開花、遺伝子、遺伝子発現、RNA、分子生物学、森林、植物
キーワード2  :  放置竹林、竹林拡大、森林資源、林産物利用、山村問題