プロフィール

五十嵐 圭日子

五十嵐 圭日子

IGARASHI Kiyohiko

専攻 生物材料科学専攻 Department of Biomaterial Sciences
研究室 森林化学研究室 Laboratory of Forest Chemistry
職名 教授 / Professor

一般の方へ向けた研究紹介

微生物の酵素を使って木や草を化石資源の代わりにする

 地球全体の温度は20世紀後半から上がり続けていて、私たち人類が石油や石炭などの化石資源を燃料や素材として使って最終的に燃やすことで、今後温暖化はさらに加速してしまうと考えられています。地球人として、私たちはいかに日常生活から化石資源を使うものを減らすことができるかが、将来的に重要になってきます。
 酵素は様々な化学反応を、常温常圧で行うことができ、さらに昨今のバイオテクノロジーの進展によって、医療や健康用途だけでなく様々な分野で利用できるようになってきています。私たちの研究グループは、自然界で木や草を栄養源としているキノコやカビ、細菌などが、植物の細胞壁を分解する仕組みを理解し、このような微生物が植物の主成分であるセルロースやヘミセルロースなどの多糖を分解する際に使う酵素を利用して、バイオ燃料やバイオプラスチックの原料、新規素材などを作る研究をしています。
 このような微生物は、自然界では「分解者」として活躍していますが、その力を人間社会に役立つように使い、私たちが生活するための環境負荷を下げることで、地球上に存在する全ての生物と共存可能となります。

教育内容

バイオマス利用で地球の様々な課題を解決する「地球医」を育成したい

 世界的な脱炭素の流れを受けて、日本でも2030年までに温室効果ガス46%削減、2050年にはカーボンニュートラルな社会の構築を目指して、様々な業界が動き出しています。その一方で、高校までの授業では気候の現状やそれに対する世界の取り組みを習うことはほとんどありません。私はClimate Reality Leaderの資格を持っておりますので、まずは地球がどのような状況になっていて、そのために私たち人類はどのようなアクションを起こすべきなのかを学ぶ機会を与えられたらと思っています。
 そのような背景を知った上で、植物の細胞壁に代表される「バイオマス」の利用に対してキノコやカビ、細菌などの微生物のバイオテクノロジーをどう利用していくのかを学び、最終的に地球全体が抱える課題に農学を武器として向き合っていける人物の育成を目指します。
 卒業・修了後の進路は、化学メーカー、医薬品メーカー、ベンチャー企業、官庁等様々ですが、多くの卒業生・修了生が環境問題を解決する仕事に就いています。

共同研究や産学連携への展望

バイオマスを酵素で壊します、有機素材を酵素で作ります

 脱炭素社会の構築に向けて、世界中が生物圏に優しい社会「バイオエコノミー」への変換を始めています。しかしながら、日本国内では未だに意識が低く、このままでは環境分野でもまた日本がガラパゴス化することが危惧されます。
 私たちの研究グループでは、バイオマスの主成分であるセルロースの酵素分解および酵素合成を研究の主軸としていますが、技術的には微生物を用いたモノづくり、酵素の異宿主大量生産等を得意としており、バイオエコノミーに関連する様々な技術に関して習熟しています。また、VTTフィンランド技術研究センターにおいて客員教授だった経験を活かして、アカデミアの枠に留まらず、常に実用化を念頭に置いてシーズ開発をすることをモットーにしています。例えば、キノコ由来のバイオマス変換組換え酵素を50種類以上ライブラリーとして保有しており、それらは全て実用化スケールで生産可能です。微生物および酵素を利用した次世代のバイオマス利用に興味をお持ちでしたら、ぜひお声かけ下さい。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  木材腐朽菌、セルロース分解酵素、バイオマス、微生物、酵素、植物細胞壁、結晶構造解析、反応速度論、きのこ
キーワード2  :  バイオエコノミー、脱炭素社会、循環型社会、バイオテクノロジー、気候現実