プロフィール

岩田 洋佳

岩田 洋佳

IWATA Hiroyoshi

専攻 生産・環境生物学専攻 Department of Agricultural and Environmental Biology
研究室 生物測定学研究室 Laboratory of Biometry and Bioinformatics
職名 教授 / Professor

一般の方へ向けた研究紹介

情報爆発を人口爆発の解決につなげたい

 世界人口は2050年には90億を超えるとされています。この人口増をささえるには年あたり4400万トンの食糧増産が必要とされています。これは今後、従来比で38%増の速度での増産が必要であることを意味します。これを限られた資源(土地、水、肥料等)のもとで達成するためには、作物の遺伝的改良や栽培技術の向上により生産性を加速度的に向上させていかなければなりません。私はこのような問題に立ち向かうべく、ゲノム、遺伝子発現・ネットワーク、栽培環境データ、画像データなど、作物に関する多様で大量な情報(Information)から、作物の遺伝的改良や栽培技術の向上に結びつけられるような「知(Knowledge)」を引き出すための手法研究を行っています。「情報」はそのままでは「知」になりません。爆発的に増加する人口に、そして、爆発的に増える生物情報に、統計学・遺伝学・情報学・育種学など、様々な学問分野の技術や理論を駆使して立ち向かう。そんな研究に興味のある人は、ぜひ一度、私たちの研究室に足を運んでみてください。

教育内容

統計学とデータ科学を核に、農業生物に関わる諸現象を計測・モデル化・最適化する

 生物測定学は、作物の収量や品質などの量的な形質の遺伝機構を統計学と数理科学の手法を用いて研究する学問です。生物測定学は、生物集団の遺伝変異を数理的に扱う集団遺伝学や、生物の遺伝的改良のための理論や手法を研究する育種学と密接な関係があります。このため、講義や実習では、生物測定学にくわえ、統計学やデータ科学に関する教育も担当しています。研究内容は多岐にわたりますが、主に、①生物を「測る」手法、②生物現象を「モデル化する」手法、③育種や栽培を「最適化する」手法、の3本柱のもとで研究を行なっています。例えば、ドローンを用いて植物の生長を経時計測し、生長をゲノムと環境から予測するモデルを構築し、モデルをもとに育種工程を最適化する研究などを行っています。こうした研究は、官民様々な研究機関との共同で行われていますが、研究室の学生には、こうした研究に取り組みながら統計学とデータ科学の理論や技術を磨き、農学と統計学・データ科学を新しい視座のもとで融合できる人物に育ってもらいたいと考えています。なお、世界で活躍できる人材を育てるために、研究室の学生には海外の機関で研究を行う機会を積極的に与えています。

共同研究や産学連携への展望

データ駆動型の農業システムで食料生産の安定化・効率化を目指す

 データ駆動型システムとは、工程を効率化するために、①データを収集する、②収集データを蓄積する、③データを解析し、モデル化とシミュレーションを行う、④解析結果をもとに最適な意思決定を行う、というサイクルを繰り返す方法です。私は、特に、データ駆動型育種システムの確立に興味をもっています。優れた品種を短期間に育成するのは容易ではありません。データ駆動型育種システムでは、個体の遺伝的能力をゲノムから予測するモデルを構築し、モデルをもとに最適な交配組合せを選択し、ゲノムをもとに優良な交配後代を選抜して高速に新品種を育成します。私は、このシステムをさらに発展させ、品種改良の専門家(育種家)が主に経験に基づいて行っている様々な意思決定を、データ駆動で行うためのデータ科学手法の研究も進めています。最終的には、データ駆動型システムを育種だけでなく、栽培管理の最適化にも応用することで、持続可能な農業システムのもとで安定的で効率的な食料生産を実現したいと考えています。なお、研究対象は、食用作物にとどまらず、薬用植物、林木、食用昆虫、微生物叢についても研究を行っています。興味を持たれた方は、ぜひご一報ください。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  最適化、作物、穀物、野菜、果樹、林木、育種、品種改良、精密農業、統計学、データ科学、統計遺伝学、量的遺伝学、フェノタイピング、計測技術、モデリング、シミュレーション
キーワード2  :  食料問題、気候変動、持続可能な食料生産システム、Nature Positive、Digital Transformation(DX)、Green Transformation (GX)