プロフィール

勝間 進

勝間 進

KATSUMA Susumu

専攻 生産・環境生物学専攻 Department of Agricultural and Environmental Biology
研究室 昆虫遺伝研究室 Laboratory of Insect Genetics and Bioscience
職名 教授 / Professor

一般の方へ向けた研究紹介

昆虫やその共生者を材料にして、生物の不思議を理解する

 私は子供の時から生き物が好きでした。小学生の頃は昆虫や甲殻類、魚類など自然から採集して図鑑と照合すること、さらに自宅で飼育・観察することに夢中でした。しかし、中学生になり、知識を中心とする生物学という科目にはあまり馴染めず、どちらかというと数学や物理を好むようになりました。ただ、実際に大学に進学するにあたり、やっぱり好きなことをしっかり学んでみたいなあ、という気持ちで理科II類、そして農学部に進学しました。その後、紆余曲折あったのですが、大きな転機は学部3年生の講義で昆虫のウイルスであるバキュロウイルスに出会ったこと、その研究の第一人者である現所属研究室のOBの方と出会ったことです。その時から、私の研究人生が始まりました。昆虫とその病原体が繰り広げる不思議な攻防(「バキュロウイルスによる行動操作」「ボルバキアによるオス殺し」「利己的遺伝子の制御システムを利用した性決定機構」)や、それら未利用バイオリソースをワクチン生産や環境に優しい農業など、人間のために役立てようとする研究(「ワクチン製造を目指した高発現型ウイルスベクターの作成」「昆虫病原体を利用したテーラーメイド農薬の開発」)に興味のある方、ぜひ一緒に研究をしましょう。

教育内容

基礎生物学と実学(農学、医学)を昆虫や微生物の研究で結びつける

 主に農学部の講義・実験実習で、昆虫の遺伝学、病理学、そしてそれらの知見から生まれた利用学を教えています。研究室では、「研究を楽しむ」ことをモットーに、室員(学生+研究員+教員)が各自独立したテーマを持って研究を行っています。将来の目標は人それぞれですが、それらのベクトルが最大になるよう指導を行っています。卒業生は研究の分野を問わず、大学で研究を継続していたり(東北大学准教授、東京大学助教など)、企業・官公庁で活躍していたりしますが(中外製薬研究所、経済産業省など)、いずれにしてもラボを卒業するときに人間として少しでも成長してもらえるよう尽力しています。博士論文や修士論文のテーマ例は以下のとおりです。
博士論文:「バキュロウイルスの感染拡大を支える分子基盤の研究」「バキュロウイルスによる宿主行動操作メカニズムの研究」「生殖細胞ゲノムを護る小分子RNAに関する研究」
修士論文:「アワノメイガ類2種のオス殺しボルバキアのゲノム解析」「アワノメイガ雄化因子OfMascの性状解析:共生細菌ボルバキアのオス殺し機構解明に向けて」「カイコ雄化遺伝子Mascの機能解析とMascの標的分子の探索」

共同研究や産学連携への展望

未利用リソースである昆虫や昆虫病原体を利用して、農学や医学に貢献する

 チョウ目昆虫であるカイコは絹糸を生産する農業生物としてだけではなく、遺伝学の研究材料として広く使われてきました(「動物におけるメンデルの法則の再発見」「チョウ目昆虫における性決定が小分子RNAによって行われること」など)。一方、その病原体も分子生物学的研究の材料として用いられており、新型コロナウイルスmRNAワクチンで脚光を浴びたCap構造もカイコ細胞質多角体病ウイルスから発見されたものです。さらに、カイコをはじめとするチョウ目昆虫に感染するバキュロウイルスは、その驚異的な物質生産能力を用いた「バキュロウイルスベクター」として、ワクチン製造をはじめとする組換えタンパク質生産に広く利用されてきました。最近では、共生細菌であるボルバキアがその感染により、蚊による病原体の媒介能力を激減することがわかっており、昆虫病原体の有用性が大きく見直されつつあります。しかし、これらのメカニズムは十分に理解されているとは言えません。私はこれらの現象の分子生物学的基盤を解明し、さらなる産業利用ツールの開発を目指します。一方、まだ未開拓の巨大なバイオリソースである昆虫やその病原体から、環境調和型社会に有用な素材を見出す研究も行っています。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  昆虫、ウイルス、ボルバキア、チョウ目昆虫、共生細菌、バキュロウイルス、性決定、性操作、行動操作、宿主制御
キーワード2  :  害虫防除、物質生産、環境調和型農業、共生社会、昆虫制御