プロフィール

増田 曜子

増田 曜子

MASUDA Yoko

専攻 応用生命化学専攻 Department of Applied Biological Chemistry
研究室 土壌圏科学研究室 Soil Science Laboratory
職名 助教 / Research Associate

一般の方へ向けた研究紹介

発見、実証、応用

 水田は他の耕作地と異なり、1年のうち数ヶ月もの間、湛水という特殊な環境下におかれます。湛水下の水田土壌では酸素の供給が乏しくなり、嫌気的な環境が発達します。水稲は、畑作物と比較して低窒素施肥で収量が維持できることが知られています。これは、嫌気環境下で起こる微生物反応が鍵となっていると考えられます。特に、水稲の養分となるアンモニアを気体から生成する反応である窒素固定は、水田土壌において活発であることが知られています。私たちは、水田土壌においてこの窒素固定を主に行っている細菌として、これまでに見落とされてきた鉄還元菌を発見しました。また、鉄還元菌の窒素固定能を世界で初めて実証しました。さらに、水田土壌において鉄還元菌の窒素固定活性を高める手法を開発しました。現在は、窒素固定だけでなくアンモニア態窒素生成に関与する微生物コンソーシアの網羅的解析や、鉄還元菌が稲わら由来の炭素を資化するまでのフローの解明を行っています。これらを明らかにすることで、水田土壌において窒素肥沃度を向上させるための技術の基盤を構築しようと考えています。

教育内容

木(=bacteria)も見て、森(=microbiome)も見る

 学部生にも大学院生にも、研究職に進むか否かに拘らず、これまでに誰も知らなかった、もしくは証明されてこなかった新奇事象を初めて自身が目にする、もしくは実証できるという世界の魅力を知ってもらいたいと考えています。
 研究室配属後には、それまでに中心であった授業における教科書を重点とした「勉強」や、得られる結果が明らかな学生実験ではなく、トライアンドエラーを繰り返して研究を組み立てていく作業の醍醐味を味わって欲しいです。また、「ただ実験を行う」「ただ手を動かす」ことや、「細部に囚われて大きな枠組みや目的を見失う」ことがない様にサポートすることを心がけています。

共同研究や産学連携への展望

微生物を利用した水田土壌の窒素肥沃度向上

 水田土壌においてイネの窒素養分であるアンモニアが生成する反応は、アンモニア生成型異化的硝酸還元(DNRA)および窒素固定です。DNRA反応の最初のステップ(NO3-→NO2-)は脱窒反応と共有しており、生じたNO2-は脱窒反応によりN2OやN2に、またはDNRA反応によりNH3に変換されます。脱窒反応の最終産物であるN2は、窒素固定反応によってNH3に変換され得ます。すなわち、DNRA・脱窒・窒素固定反応は水田土壌におけるアンモニア生成に密接に関与しており、統合的に捉える必要があります。そこで、水田土壌のアンモニア態窒素供給力すなわち地力窒素を向上させるための知見を得ることを目指し、これらの反応により消費および生成される窒素化合物量とその遷移や制御要因、反応の各ステップを駆動する微生物群を詳細に解明しています。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  土壌、微生物、窒素固定、鉄還元菌、稲わら、安定同位体、メタトランスクリプトーム
キーワード2  :  低窒素農業