プロフィール

松脇 貴志

松脇 貴志

MATSUWAKI Takashi

専攻 獣医学専攻 Department of Veterinary Medical Sciences
研究室 獣医生理学研究室 Laboratory of Veterinary Physiology
職名 准教授 / Associate Professor

一般の方へ向けた研究紹介

体の恒常性維持を助ける脳内因子の働き

 ヒトを含む動物の体は、外部の環境の変化にかかわらず一定の状態を保つことで、健康を維持しています。これを、生体の恒常性と呼びます。私たちの研究グループでは、この恒常性の維持のために脳内で様々な物質が働く仕組みについて研究しています。私たちが20年以上研究対象としているプログラニュリンという因子は、神経を保護する働きをもち、その機能が失われると神経変性性疾患と呼ばれる、認知症を伴う病態を引き起こすことが、近年わかってきました。私たちはプログラニュリンを欠損する実験動物を独自に作製し、研究を続けています。また、脳内で働いて全身に発熱を引き起こすPGE2という分子を産生できない動物を用いて、脳で制御される全身の体温調整メカニズムについても研究しています。すでに世の中で研究が進んでいる体温上昇すなわち発熱に加えて、まだあまり知られていない体温低下の機構について重点的に解析しており、多くの新たな知見を得ています。

教育内容

脳内から生命現象を紐解く

 私たちは、生命現象を個体レベルで理解する、をモットーに、以下の3つのテーマについて神経内分泌学的な観点から研究を行なっています。

  1. 脳内因子progranulinによる雄型神経回路の形成機構、神経興奮性制御機構の解析
  2. 光関連遺伝子を用いた生殖中枢の観察と制御
  3. 中枢神経性体温低下モデル動物を利用した新規体温管理法確立

脳内でも特に生体内の恒常性維持に重要な視床下部に焦点を当て、独自に作製した遺伝子組換え動物を用いて研究を続けています。我々の研究室で長年培った伝統的な神経内分泌学的実験手法に加え、常に様々な最先端の実験方法を取り入れています。
学生さんの研究課題については上の3つに関連するものを私たち教員と話し合って決定します。日々の実験に加えて論文紹介ゼミや研究報告ゼミ、教員、室員との討論を通して、研究に必要なだけでなく日々の生活にも役立つような論理的な思考法を身につけてもらいたいと考えています。

共同研究や産学連携への展望

脳内炎症因子・抗炎症因子による病態発現機構とその制御法の検討

 私たちの研究班は、以下の三つのテーマに取り組んでいます。

  1. 脳内因子progranulinによる神経保護機能
  2. ストレス条件下における生殖機能制御機構
  3. 中枢神経性体温低下モデル動物を利用した新規体温管理法

1. Progranulinは、その遺伝子異常がアルツハイマー病などの神経変性性疾患の原因となることが明らかとなり、神経保護的な役割が世界的に注目されています。私たちもこれまで、中枢神経系の病態発現やその抑制に関連したprogranulinの働きについて研究を行ってきました。最近の成果としてはprogranulinがてんかん発作などの神経細胞の異常興奮を抑制する働きをもつことを明らかにしました(Kayasuga et al.、 2007; 他)。
2. ストレス条件下で生殖機能を抑制するのは、脳内で増加したプロスタグランジンであることを明らかにしました(Matsuwaki et al.、 2017)。さらに現在は、生殖機能を中心的に担うGnRHニューロンに特異的に蛍光を発するラットの脳内に蛍光顕微鏡に接続した光ファイバーを刺入することで、神経興奮状態の即時的な蛍光観察を試みています。
3. 私たちはこれまで、感染時には血管内皮細胞で産生されたプロスタグランジンE2が視床下部で働くことで体温が上昇することを見出しました(Matsuwaki et al.、 2014 & 2017; Eskilsson et al、 2017他)。一方で、感染性体温低下の詳細な機構については未だ不明な点が多く残されています。我々の研究グループは、熱源物資であるプロスタグランジンE2の合成酵素の遺伝子を欠損するマウスの一部では、感染刺激時に体温が上昇しないだけではなく強度の体温低下を呈することを見出しました。さらに、その他いくつかの低体温発症モデルを用いて、感染性低体温の発症機構についての研究を進めています。

研究概要ポスター(PDF)

最近のプレスリリース

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キーワード

キーワード1  :  動物、脳、視床下部、神経内分泌、生殖、体温、発熱、認知症、性分化、感染、体温低下、神経
キーワード2  :  認知症、てんかん、繁殖障害、感染症