プロフィール

宮沢 佳恵

宮沢 佳恵

MIYAZAWA Kae

専攻 農学国際専攻 Department of Global Agricultural Sciences
研究室 国際植物資源科学研究室 Laboratory of sustainable agriculture
職名 准教授 / Associate Professor

一般の方へ向けた研究紹介

農業が地球環境を破壊するのではなく、より豊かな地球環境を作るために

 人間がこの地球上で生きていく上で欠かせない食料を生産する農業ですが、この食料生産が地球の環境に大きな負荷をかけ続けています。どうしたら人間がこの地球上で豊かに生活を行いながらも、地球の環境を壊さずに逆に地球環境にとって有益で重要な種(Key stone species)として存在していけるのでしょうか。この研究室では、そのために必要となる農業技術の研究を行なっています。
 これまでも有機農業やRegenerative agricultureなど、環境負荷をかけずにさらに土壌に炭素を蓄積できる農業のアプローチの研究がされてきました。しかし有機農業では収量が落ちることから農地を広げる必要があることや、炭素の蓄積が想定していたよりも増えないという課題があります。そこで私たちの研究室では、木質有機物などのこれまで使われてこなかった炭素比率の高い有機物を土壌に投入することで、土壌生態系を改変して糸状菌が優占する土壌環境を作り出し、炭素貯留を行いながらより豊かな生産を行う方法を研究しています。

教育内容

新しい農業技術の構築というリスクのある研究に挑戦

 この研究室で取り組んでいる内容は、既存の農学や生態学の知識をベースとしながらも、これまで行われてこなかった新しい農業技術の構築を行うものです。こうした農業技術は、農業のプロである篤農家の方々の経験や知識も大事なリソースとなります。実際に農業現場に行き、コミュニケーションを取りながら一緒に作業をして学ぶことが必要です。また、これまでの研究の蓄積から確実に答えが出ることが明らかな研究ではなく、想定していたようなデータが得られないかもしれない未知の領域に踏み出す研究となります。安心・安全な路線ではなく、結果が出ないかもしれないリスクのある研究を行う勇気のある学生を募集します。
 指導スタイルは、学生の自由を尊重して一緒に探求するスタイルとなります。研究の相談や指導は学生からのコンタクトがあればいつでも最優先で行います。ただし、私からの研究の指示や指導をされるのを待つ傾向のある学生は向いていないかもしれません。受け身で知識を消化するのではなく、自ら得た知識を研究室内外で共有し、お互いの研究の発展に貢献しようという姿勢を高く評価します。

共同研究や産学連携への展望

日本の農業と林業と地域を元気にしながら地球温暖化問題を解決

 気候変動の問題の解決策として期待されているのが、4パーミル・イニシアチブの取り組みに代表される耕地土壌への炭素貯留を増やす方法です。その中でも、バイオ炭の農地施用は微生物によって分解されやすい他の有機物と異なり、炭素を半永久的に土壌に埋設できることからJ-クレジット制度で認証されることになりました。しかし、バイオ炭を単に施用しただけでは作物生産にプラスの効果が見られるとは限らず、逆に収量低下を招くこともあります。私たちの研究室では、地域の資源を利用して、まず腐生性の真菌を耕地で増加させることにより短期間で土壌生態系を改善し、バイオ炭などによる耕地土壌への炭素貯留が作物生産にもプラスに働く環境を整える研究を行なっています。これにより、気候変動の問題の解決策と農業生産がwin-winの関係となり、世界的に4パーミル・イニシアチブの取り組みが加速することが見込まれます。
 腐生性の真菌を耕地で増加させるために、有機物資源として木質チップを用います。現在日本には、多くの管理が必要となっている放置林がありますが、森林管理で生じる剪定枝等を畑で利用することで、畑と森の両方からの恵みだけではなく、その循環を用いることで地域の豊かな生態系を作り出すことができる可能性があります。日本の農業と林業、そして地域の循環や経済を促進しながら気候変動の問題の解決するプロジェクトとして連携してくださる市町村、法人、分野を超えた研究機関の皆様を大募集中です。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  野菜、作物、果樹、環境保全型農業、循環型農業、地域循環、再生農業、カーボンファーミング、土壌生態系
キーワード2  :  気候変動、森林破壊、食糧問題、放置人工林、地域再生