プロフィール

森脇 由隆

森脇 由隆

MORIWAKI Yoshitaka

専攻 応用生命工学専攻 Department of Biotechnology
研究室 生物情報工学研究室 Bioinformation Engineering Laboratory
職名 助教 / Research Associate

一般の方へ向けた研究紹介

微生物・植物の生命科学と物理学・情報学の融合

 世界には非常に多様な植物や動物などの生命体が存在していますが、その生命活動を分子レベルまで細かく見ていくと、DNAやタンパク質の働きとそれらの間での化学分子のやりとりに行き着きます。その中でも、いずれの生命体においても基本的にわずか20種類(+α)のアミノ酸のペプチド結合の繰り返しによって作られるタンパク質は様々な立体構造をとり、それによって筋肉や皮膚の形成や酵素による代謝など、生命活動に必要な機能を作り出しています。私の所属する応用生命工学専攻では多様な進化を遂げた微生物や植物が持つ様々な酵素とその代謝産物に着目してそれらの人間社会への応用を試みていますが、世界に億単位で存在する多様なタンパク質の機能を実験で1つ1つ調べていくことはとても大変です。そこで、私は計算的・物理的な立場から、実験だけでは解明が難しいタンパク質についての解析を進めたり、計算によって応用を予測したりする手法の研究を進めています。特に、タンパク質を水溶液中で動かす分子動力学シミュレーション法や、タンパク質の中での化学反応をシミュレートするQM/MM法を得意としています。近年では、これらの技術に加えてディープラーニングの手法も組み合わせ、人工的なタンパク質の創出にも取り組んでいます。

教育内容

物理・化学・生物・情報でタンパク質の謎を解明する

 駒場の前期教養学部では、当専攻が毎年主催する全学自由研究ゼミナール(2022年度は「微生物の生きざま ―基礎から応用研究のはなし―」というタイトルでした)において、計算科学を使った微生物のタンパク質研究について講義を行いました。また、農学部ではパソコンを使ったタンパク質構造の表示と洞察を目的とした学生実験を行っています。研究室は実験施設を持たない代わりに、計算機上でプログラミングによる生命科学関連の世界のデータベースからのデータの取得、そしてタンパク質構造情報についてシミュレーション方法の習得を踏まえた上で、新規酵素クラスの発見や、大量のタンパク質データに潜むデータマイニングや手法論開発を行っています。これらの技術を活かし、卒業生はITエンジニアにつく方が多いです。

共同研究や産学連携への展望

実験研究が困難な領域に計算科学で立ち向かう

 タンパク質の機能解析において、構造未知のタンパク質が持つ機能解明や、結合するリガンドの予測、変異による影響、空気中で不安定な化合物を仲介するために実験での検証が困難なタンパク質の系についての計算科学による知見の提供を得意としています。共同研究は随時募集しており、これを通じて数多くの実験研究者との共著論文を出版した実績があり、この例としてアブラナ科植物の受精制御におけるタンパク質複合体の構造予測とその複合体界面の研究、タマネギの催涙因子の酵素内反応機構の解明などを行いました。また、研究手法の性質上製薬企業との共同研究にも向いていると考えています。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  植物、微生物、二次代謝産物、酵素、構造生物学、タンパク質、計算科学、量子化学、分子動力学シミュレーション
キーワード2  :  食糧問題、タンパク質創出