プロフィール

永田 宏次

永田 宏次

NAGATA Koji

専攻 応用生命化学専攻 Department of Applied Biological Chemistry
研究室 食品生物構造学研究室 Laboratory of Food Biotechnology and Structural Biology
職名 教授 / Professor

一般の方へ向けた研究紹介

分子と分子の相互作用を調べていくことで生命現象はすべて説明できる。

 ヒトの健康は、日々食べるもの・飲むものにより左右されます。食品に含まれる化合物には動物・植物・微生物由来のものがあり、実に多様です。さらに、発酵・調理等によって、化学変化や状態変化が生じます。摂取した食品成分は、栄養として消化・吸収されるだけでなく、良い効果(抗がん・抗酸化・抗糖化・抗菌・抗ウイルスなど)や悪い効果(発がん性・アレルゲン性など)を示したり、口腔内・消化管内の微生物叢に影響を与えたりして、直接・間接的にヒトの健康に影響します。
 私は、食品の正・負の機能、両方に着目し、食品成分およびそれに応答する生体分子の形や動きを可視化し、食品がヒトの健康に影響を与えるしくみを解明していく「食品生物構造学」の研究を進めています。具体的には、(1) 機能を有する食品成分の単離・同定(天然物化学)、(2) その機能を示しうるのは何故なのか(why?)、どのようなしくみで機能を示すのか(how?)、化学構造の特徴・分子の立体構造・分子間相互作用・化学反応による構造の変化による理解(分子細胞生物学・物理化学)、(3) 機能成分と標的分子の複合体構造決定による作用機構の可視化(構造生物学)、さらに、(4) より良い効果を示す化合物の探索(天然物化学)または創出(有機合成化学)を進めています。
 このような研究により、食品による健康増進に科学的根拠を持たせ、食の質の改善による世界規模での健康増進を実現することを目標としています。

教育内容

難解な概念を平易な言葉で説明しよう。予想通りに進まない実験科学のワクワク感を楽しもう。

 教育者としての私のモットーは、難解なことも、できるだけ平易な言葉で説明して、理解することの楽しみを味わってもらう、です。学部3・4年生向けの講義(食品生物構造学)では、構造生物学(タンパク質分子の立体構造の調べ方。NMR溶液構造解析法、X線結晶構造解析法、クライオ電子顕微鏡法)の基礎を丁寧に説明し、教科書を読んで独学できるだけの学力をつけることを目標にしています。
 研究室内では、Molecular Biology of The Cellの輪読会を開いています。生命の謎解きがわかりやすい絵と文で解説してあります。
 大学院講義(食品物理化学)では、学内外の専門家を講師として招いて、受講している大学院生の皆さんに、様々な観点からの研究の進め方や考え方に触れてもらおうと思っています。研究の興味深さや考え方の多様性を知り、自分自身の研究構築に役立ててもらうためです。
 農学生命科学研究科・農学部の教育・研究機関として良いところは、丁寧な基礎教育の充実と実験科学の実践だと思います。実験をしていると、失敗したり、予想外の結果が得られたりと、いろんなことを経験しながら、少しずつ真実に近づいてく楽しみを味わうことができます。私が尊敬している方が「私は農学部出身ですから実験量で勝負です。自分は頭が良いと思っている人は簡単に諦めすぎですよ。」とおっしゃったのが強く印象に残っています。私も、やると決めたら、諦めずにやりぬこうと思っています。
 研究室の卒業生は、食品・化学・製薬等の企業に就職したり、国内外の大学や研究機関で教員・研究員として活躍しています。

共同研究や産学連携への展望

人の健康と食品と環境の関係をより良くするために『食品分子科学及び構造生物学』研究を一緒に進めませんか?

取り組んでいる社会問題
 

私は、人の健康に食品や微生物が与える影響に興味があります。「分子間相互作用」の観点から人と食品や微生物との関わりを理解するための研究を進めています。その成果は、健康寿命延伸に役立つ基礎科学および応用技術の確立に貢献します。また、物質循環の観点から、食品廃棄物として捨てられているものの高付加価値化や再利用に貢献したいと考えています。

現時点での課題に対する成果物や進捗
 

【薬剤耐性菌を生じない天然素材による静菌システムの構築】
 抗生物質の濫用により、多剤耐性菌が発生し、多剤耐性菌で汚染された畜産水産物が流通している可能性が指摘されています。私たちは、食品由来の静菌・殺菌物質の探索・同定を進めています。
【食品による健康寿命延伸効果の分子基盤解析】
 食品成分が遺伝子発現や酵素活性等の細胞の活動に与える影響について、私たちは分子間相互作用の観点から解析を進め、食品成分がヒトの健康にどのような効果を与えうるのか、実験データに基づいて予測・検証を行っています。
【食品や生体試料の成分分析から食品や人の健康状態を知る方法の確立】
 食品や生体試料(唾液・尿など)の成分分析から、食品の特徴づけ(味・品質・品種・産地・履歴・状態)や人の健康状態との関連付けを行っています。

今後の進展に適用可能な技術や研究、展望
 

食品成分等の有機化合物の精製・構造解析(MS・NMR)。組換えタンパク質の発現・精製・結晶化・立体構造解析(NMR・X線結晶学・電子顕微鏡)。分子間相互作用解析(ITC・SPR)。細胞培養。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  食品分子科学、構造生物学、分子生物学、生物化学、分析化学、抽出・精製・構造解析、組換えタンパク質の発現・精製・結晶化・立体構造解析(NMR、X線結晶学、電子顕微鏡)、分子間相互作用解析、細胞培養、生理活性ペプチド、ファイトケミカル、ポリフェノール 、膜タンパク質、受容体、輸送体、タンパク質構造、タンパク質機能、分子間相互作用
キーワード2  :  食品安全性およびリスク評価、生活習慣病の予防、感染症対策、環境浄化、廃棄物減少