プロフィール

西田 和弘

西田 和弘

NISHIDA Kazuhiro

専攻 生物・環境工学専攻 Department of Ecosystem Studies
研究室 農地環境工学研究室 Laboratory of Land Enviromental Engineering
職名 准教授 / Associate Professor

一般の方へ向けた研究紹介

生産性が高く環境に調和する農地環境を造る

 食料生産を持続的に高いレベルで行うことは,人類が継続して持つ大きな目標です.食料生産の基盤である農地の開発と生産性の向上は,この目標の達成に大きな役割を果たしてきました.しかし,現在のレベルを以ってしても,増え続ける世界人口を養い続けるには十分ではありません.それどころか,渇水や洪水,気温上昇等の気候変動に伴う生産性の低下,塩類集積や過放牧等の砂漠化に伴う乾燥地の農地の荒廃,農家の後継者不足に伴う日本の耕地面積の減少など,世界や地域の農業の生産性や持続性を脅かす様々な問題が深刻化しています.また,多量の施肥の投入と流出による水質汚染,過剰灌漑に伴う水資源の枯渇など解決すべき環境問題も多数生じています.このような食料と環境に関する多様な課題を解決するためには,生産性のさらなる向上に加え,農業を営む人々や自然環境にとって好ましい農地環境を整備し,これを維持し続けることが重要です.この実現に向け,農地(土壌―植物―大気系)の物質移動の科学を基礎として,IoTやセンシング技術等の新しい技術を活用しながら,より良い農地環境を造り維持・管理するための方法について私たちは研究しています.

教育内容

現場の課題を解決する

 農地の生産性向上と環境保全の両立を図るには,対象とする現場の自然条件や社会条件をよく見て,それに応じた適切な方法を考えなければなりません.学部や大学院の講義では,そのための基礎となる農地(土壌―植物―大気系)における水・熱・物質移動の理論と作物の生育との関係,国内外の農地で生じている様々な問題と対策,土地と水を管理する技術とその考え方について講義を行っています.また,研究室配属後の研究では,気候変動対応や砂漠化対策など,現場の課題解決を目指した実践的なテーマの指導をしています.日本や乾燥地の農地を対象とする現地調査や試験,理論に基づく解析や数値シミュレーションを共通する研究手法として,テーマ毎に必要な室内試験やリモートセンシング,GIS等の様々な手法を取り入れながら,現場の課題解決に資する技術の開発に挑戦しています.このような教育活動を通じて,農地環境に関する知識・技術だけでなく,社会の様々な課題解決に応用できる課題発見・解決能力や論理的思考力を身に着けてもらいたいと考えています.卒業・修了生は,農林水産省等の官公庁,建設業,農業土木コンサルタントを中心に多様な分野に就職しています.

共同研究や産学連携への展望

科学と新技術の融合によるデータ駆動型農地管理

 農地の水分,温度,窒素・塩分の状態を最適化するための農地管理技術について研究しています.特に,水田や畑の水管理(灌漑・排水)が農地環境と作物の生育に及ぼす影響の解明と,その応用としての水稲の高温障害・冷害,畑作物の乾燥害・湿害,乾燥地の塩害等を防止・軽減する水管理技術の開発に取り組んでいます.一方で,従来よりも高度で複雑な管理を実施するためには,現場への導入が容易な計測・管理のための装置が欠かせません.そのため,研究成果の現場への応用を加速させるものとして,近年の安価で高精度なセンシング技術,IoTや計算機の能力を利用した管理の自動化・遠隔化の技術に,大きな期待を寄せています.これらの技術の活用によって,従来の人による管理では実施困難であった対策を行えば,作物生産の増加・安定化に加え,地域の物質循環の最適化や制御,渇水・洪水対策など地域環境に関する様々な課題に対しても大きく貢献できると考えます.こうした技術を開発されるメーカーや研究者の方との共同研究によって,農地の生産性の向上と環境保全を両立する技術開発を促進し,食料生産や環境に関する様々な課題の解決に繋げたいと考えています.

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  農地環境工学、水田、畑、灌漑、排水、水管理、水利用、土壌‐植物‐大気系、水・熱・物質移動、温度、窒素、塩
キーワード2  :  食料生産、気候変動、渇水、洪水、乾燥害、湿害、高温障害、冷害、砂漠化、塩類集積、塩害、過放牧、水質汚染、データ駆動、IoT