プロフィール

西村 拓

西村 拓

NISHIMURA Taku

専攻 生物・環境工学専攻 Department of Biological and Environmental Engineering
研究室 環境地水学研究室 Laboratory of Soil Physics and Soil Hydrology
職名 教授 / Professor

一般の方へ向けた研究紹介

水と土を通じて食と環境の改善に貢献する

 私達の主食となる穀物の生産量は、灌漑で人為的に水を与えている農地の面積の増加と共に増えてきました。また、過去60年間にわたり、人一人当たりの灌漑農地面積は変わっていません。すなわち、人口増大の下、私達は灌漑農業によって生きています.しかし、現在、世界の淡水使用の約7割が農業目的で、灌漑に用いる水資源には限界が見えてきました。これからは大切な水をできるだけ効率よく使うための技術がさらに重要になります。他方、降雨時に生じる土壌侵食(水食)は食料生産の障害となると同時に周辺の河川・湖沼の生態系に影響を与えます.微生物の活用も土壌水分やそれに伴う土壌空気環境に左右されます。農地の生産性は土壌環境を維持・最適化していくためには、土壌中の水、空気、熱、さらには肥料などの化学物質の動態や土そのもの変化を定量的に把握していくことが重要です。私達は、測定やモデル研究を通じて、皆さんが気にも留めない足元の土の中で起きている重要な現象を明らかにする研究に取り組んでいます。

教育内容

データで土の機能を最適化することはできるか

 沙漠化が問題になる一方で、日本のような水の豊富な湿潤地域特有の土壌劣化があります。土中の水は多くても少なくても困るので、その量を時間的・空間的に適正化する工夫が望まれます。また、高機能な微生物で土壌環境を改善することがしばしば提案されますが、微生物が活躍できるような水分・養分条件を土壌中に作れるかどうかはまた別問題です。21世紀に入って、土壌に関する測定技術は大きく進歩し、土壌中の水分や化学性、土壌構造といった、以前は十分に把握できなかった情報を得ることができるようになりました。IoT、ICTの進歩でさらにリアルタイムでデータを見ることも可能になりつつありますが、切り口が多すぎてデータに溺れることもしばしばです。
 このような状況の下、私たちは、得たデータをただ信じるのではなく吟味できるような人材、また、自らデータを得ることのできるような人材の育成に貢献できればと考えています。実験好きな学生も大歓迎です.結果として、卒業生には、土に関わる農学や工学の分野の研究者や技術者だけではなく、データを用いて社会を構築していくコンサルティングや国家公務員になる人がいます。

共同研究や産学連携への展望

熱・水・化学物質ならびに土の移動を知る

 土壌中で起きている様々な移動現象は、私達の社会に大きく影響しています。地下における汚染の拡散や除染のみならず、たとえば、土壌が関わる温室効果ガスのフローは、人為的なCO2放出よりも遥かに大きく、土壌への炭素固定や温室効果ガス発生抑制のためには、土壌中の無機物・有機物・水分・熱の動態把握が重要です.有効な資材を投入しても、適切に水分や熱が供給されなければ期待する性能は発揮されません。農業においても、農地における水や養分の移動を把握することが、今後の気候変動下で生産を維持するために重要と考えられます。
 IoT、DXで農地のデータを入手しやすくなっていますが、土壌中の水分の移動は、土の乾湿に伴って数桁のオーダーに渡って変化する特徴を持っています。このような大きな変化は、通常の資材・材料にはなかなか見られないものです。私たちの研究室では、土壌データを活用して土壌の機能を維持・向上するような科学・工学の構築や、農業だけではなく、土壌への炭素固定、温室効果ガス発生抑制といった環境に関わるテーマについても、土壌中の水・熱・物質移動の観点で取り組んでいます。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  土壌保全、温暖化緩和、水移動、土壌構造、炭素固定、不飽和透水係数、土壌コロイド
キーワード2  :  土壌汚染、気候変動、温暖化、土壌保全