プロフィール

奥田 傑

奥田 傑

OKUDA Suguru

専攻 応用生命化学専攻 Department of Applied Biological Chemistry
研究室 食品生物構造学研究室 Laboratory of Food Biotechnology and Structural Biology
職名 准教授 / Associate Professor

一般の方へ向けた研究紹介

膜蛋白質科学から考える食品科学

 細胞は常に様々な環境変化にさらされていますが、外界と細胞内を隔てる細胞膜の存在によって物質の移動が制限されるため、細胞内の環境はある程度一定の状態に保たれています。細胞膜を勝手に透過する物質もありますが、多くの物質の取り込みや排出といったやりとりは、細胞膜に存在するトランスポーターやチャネルと呼ばれる膜蛋白質が担っています。これらの膜蛋白質は、私たちの体において栄養素の取り込みや不要物の排出といった役割を果たしており、トランスポーターのなかには糖尿病や脂質異常症といった生活習慣病と深く関連しているものもあります。また、食中毒の原因となる細菌毒素や、虫歯や歯周病の原因となるバイオフィルムの構成因子の菌体外への排出にもトランスポーターが関わっていることが知られています。私たちは、生物種にかかわらず、このような“食”に関連する膜蛋白質の機能・構造解析を行い、その作用機構を解明し、さらに機能を制御する方法を提案することで、人々の健康増進に貢献することを目標に研究を進めています。また、この機能制御に関与するような食品成分の探索も積極的に行なっていきます。

教育内容

研究を通じて、いろいろ学ぶ。

 学生には、とにかく自分で考えて研究を進めるよう指導しています。上級生や教員にアドバイスをもらうことは大事ですが、言われたままに実験をするだけでは応用力は身につきません。研究目的を正しく理解し、その段階で必要な実験を自分でデザインできるようになることが重要だと考えています。失敗を繰り返しながら、少しずつ前進していくという地道な作業ですが、この作業によって忍耐力も身につきます。このような研究の過程を通じて、論理的な思考回路を身につけ、研究以外でも社会を牽引できる人材が育つよう努めています。実験以外では、論文セミナーや研究進捗報告会などを行なっており、英語論文の読み方や研究データのまとめ方、伝え方などを教えています。これらは、論文を執筆するときに必要になります。また、他人にわかりやすいプレゼン資料をまとめることは、研究以外でも役に立つ重要な能力です。  研究室には様々な考えを持った人が集まるので、皆が思い通りに行動できるわけではありませんが、研究室全体に気を配り、スタッフを含めメンバー全員が心地よく研究を進められるような環境づくり、およびそのための学生指導に努めています。

共同研究や産学連携への展望

食と健康の関連を分子レベルで観てみませんか?

 “食”に関連する社会問題を中心とした研究に取り組んでいます。健康寿命延伸に寄与する食品成分の同定や、その作用機構の解析など、食事による健康増進について分子レベルで解明する試みです。食品からの生物活性成分の抽出や単離、それらと生体分子の相互作用解析など、生化学、蛋白質科学、および構造生物学的手法を組み合わせて、食品成分による健康増進の分子機構を明らかにしていきます。これまで、グラム陰性細菌の外膜形成機構解析やがん細胞の増殖機構解析などを行なってきたため、抗菌作用や抗がん作用をもつ成分の分子機構解析が得意です。特に生体内での分子輸送・膜透過機構については専門分野なので、食品成分の作用の有無に関わらず、研究対象としています。  最近では、食品ロス削減に向けた、未利用資源を利用した新食品や肥料・飼料の開発といった課題に興味を持っています。世界的な人口増加や経済発展にともない、食料が不足することは以前から指摘されています。健康を増進するような成分を含む未利用資源を用い、食品ロスの削減と健康寿命の延伸を同時に達成できる新食品の開発を目指しています。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  細胞、細菌、微生物、がん、抗菌、抗がん、蛋白質、低分子、食品、トランスポーター、膜蛋白質、天然物、栄養
キーワード2  :  食糧問題、健康寿命、フードロス