プロフィール

鈴木 道生

鈴木 道生

SUZUKI Michio

専攻 応用生命化学専攻 Department of Applied Biological Chemistry
研究室 分析化学研究室 Laboratory of analytical chemistry
職名 教授 / Professor

一般の方へ向けた研究紹介

未来を拓くバイオミネラリゼーション研究

 貝類やサンゴ、ウニなどは生物が作る硬い組織を持つことで知られています。これらは炭酸カルシウムを主成分とする硬組織ですが、単なる無機化学反応で作られるのではなく、生物由来の少量の有機物が作用することで効率的に高強度の炭酸カルシムを沈着させています。このような現象をバイオミネラリゼーションと呼びます。私はバイオミネラルに少量含まれる有機物の正体を明らかにする研究を進めていて、これまでに全く新規のタンパク質や化学反応が存在していることを明らかにしてきました。宝石である真珠も炭酸カルシウムを主成分とするバイオミネラルの1種ですが、真珠に含まれる重要な新規タンパク質を世界で初めて報告し、タンパク質の名前を自分で命名しました。このような特殊なタンパク質の機能を利用することで、工業的に様々な炭酸カルシウムを合成する技術に応用することができます。また、炭酸カルシウムは二酸化炭素が水に溶けた後にカルシウムイオンと結合し生成されます。バイオミネラリゼーションでは、この反応を効率よく進めることができるため、大気中の二酸化炭素を炭酸カルシウムに固定化する研究にも応用可能です。バイオミネラリゼーションの原理を追求し、社会に貢献できるような成果を出していきたいと考えています。

教育内容

農学部で無機化学

 農学部では唯一の無機化学系の分野の講義を行っています。担当講義は「基礎分析化学」、「分析化学」、「生物無機化学」です。他にもオムニバスの食品系の講義で食品のミネラルの話や、毒性金属についてお話しています。生命科学という広い領域を研究するには狭い専門分野に囚われるのではなく、幅広い知識と教養が必要です。「有機物」に関連する講義が多い農学部で、「無機物」という裾野を少しでも多くの学生に広げてもらいたいと思っています。研究室の学生は真珠を始めとしたバイオミネラリゼーションや食品のミネラル、毒性金属、金属ナノ粒子などの研究テーマを推進しています。他大学や企業との共同研究も盛んに行っており、一人の学生さんに一つの研究テーマですが、インタラクティブに研究を進めています。自発的に論理的な思考ができる人材を育てていきたいと考えており、方針としては学生さんの自主性を重んじています。修了後は国立の研究所、化学メーカー、食品メーカーの研究職に就職する人が多いです。

共同研究や産学連携への展望

バイオミネラリゼーションで脱炭素

 大気中の二酸化炭素濃度が上昇し、地球温暖化対策が早急に求められています。多くの取り組みは二酸化炭素を有機物に固定化するというものですが、有機物への変換はエネルギーを必要とするので常にコストと二酸化炭素収支との戦いになります。一方で、二酸化炭素から炭酸カルシウムへの反応は自発的に進む反応であるため、外部からのエネルギーを必要としません。しかし、海洋中では様々な共存イオンが存在するため速度論的には不利な反応であるため容易に炭酸カルシウムは沈殿しません。生物のバイオミネラリゼーションは海洋中で効率的に炭酸カルシムを沈殿させることができます。このようなバイオミネラリゼーションの分子メカズムを解明することで、高効率に炭酸カルシウムを製造する技術に応用可能です。現在も様々な企業との共同研究でこの取り組みを進めていますが、より大きなプロジェクトでバイオミネラリゼーションによる脱炭素研究を推進したいと考えています。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  バイオミネラリゼーション、生物無機化学、分析化学、生命金属、アコヤガイ、真珠、サンゴ、ウニ、耳石、歯、骨、歯石、金属ナノ粒子、量子ドット、炭酸カルシウム、アラゴナイト、カルサイト、リン酸カルシウム、アパタイト、ウィットロッカイト、円石藻、キチン、キチナーゼ、キチン合成酵素、カルシウム、金、マグネシウム、カドミウム、鉛、リン酸、パイライト、硫化鉄、鉄、亜鉛
キーワード2  :  気候変動、脱炭素、温暖化、海洋酸性化、CCS、CCUS、DAC