プロフィール

鈴木 智之

鈴木 智之

SUZUKI Satoshi

専攻 附属演習林 The University of Tokyo Forests
研究室 森林圏生態学研究室 Laboratory of Forest Ecosystem
職名 助教 / Research Associate

一般の方へ向けた研究紹介

長期的な観察に基づく森林の変化を解明

 樹木の寿命は長く、成長も遅いため、森林は長い時間をかけてゆっくりと変化します。その変化を検出するためには、長期的な観察が必要です。私は、そのような長期的な森林の変化を明らかにすることに取り組んでいます。
 気候変動などの環境変化によって気候変動によって、森林における炭素吸収量が増えるのか減るのかは、よくわかっていません。生物の分布も変わってきているため、森林を構成する樹種も徐々に変化していることが報告されていますが、それが森林の働きにどのような影響を及ぼすかもまだよくわかっていません。気候変動などの環境変化が森林に与える影響を明らかにするために、森林の成長や様子が数十年前に比べて変わっているか、などを長期的なデータを活用して解明することを目指しています。
 また、森林の炭素蓄積の役割としての枯木木にも注目しています。樹木は、枯れた後も長い間森林の中に残り続け、炭素を保持し続けます。亜寒帯や亜高山帯の森林では、枯れ木の炭素量が半分以下になるのに数十年もかかることもあります。森林における炭素吸収量を正確に推定するためには、枯死木の分解の速さやそれに与える影響を明らかにする必要があります。

教育内容

フィールド調査と長期データの解析の両輪で進める生態系研究

 森林や生態学に関する基礎的な知識を身につけてもらいつつ、気候変動や生物多様性などの現代的問題にも取り組むことができる人材の育成を目指しています。研究アプローチとしては、自らフィールドでデータをとると同時に、これまで蓄積されたデータも用いて、解析的なアップローチで森林の変化を検出します。
 特に、演習林の森林を舞台にした教育研究を展開します。実習では、富良野にある北海道演習林において、北方針広混交林の森林の生態を体感できる実習を行っています。研究としては、本州の亜高山帯や各地の演習林でのフィールド調査、演習林に蓄積している長期データを用いた解析を行っています。

共同研究や産学連携への展望

北方林生態系における木質炭素収支の評価と気候変動応答

 22,000haの森林フィールドである北海道演習林において、森林の炭素吸収量の推定を行っています。北海道演習林には、1960年代から継続的に同じ場所を調査し続けている調査区が多数あり、半世紀の間にどれだけの炭素を吸収してきたのかがわかります。長期的に択伐(一定範囲のすべての木を伐るのではなく、一部の木を選んで伐る)を行っており、木を伐採しない場所との比較によって、伐採することが炭素吸収量に与える影響を評価することが可能です。さらに、枯死木の分解によって放出される炭素量も評価していくことで、木質バイオマスにおける炭素収支の推定に取り組んでいく予定です。気候変動が、これらの炭素収支に与える影響についても評価していきます。
 生態系における物質循環のマーカーのひとつとして、様々な生物種の脂肪酸組成の評価も行っています。野生生物の脂肪酸組成に興味がある研究者や企業との連携を期待しています。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  森林、植物、
キーワード2  :  森林の長期変化、気候変動、環境変化、炭素蓄積、年輪解析、脂肪酸