プロフィール

山次 康幸

山次 康幸

YAMAJI Yasuyuki

専攻 生産・環境生物学専攻 Department of Agricultural and Environmental Biology
研究室 植物病理学研究室 Laboratory of Plant Pathology
職名 教授 / Professor

一般の方へ向けた研究紹介

植物保護を通じて世界の食料・環境問題に貢献する

 植物の病気により世界中の作物生産のなんと約1/3もの量が失われています。食料や農業資材価格が高騰し、私達の食生活が脅かされる中でこれは見逃せない数値です。一方で、新型コロナウイルスが短期間で世界中に拡散したように、植物の病気もグローバル化により世界中への拡散速度が速まっており、地球環境の悪化に拍車をかけています。これらの問題を解決するため、植物病理学分野においては植物の難病の原因となる植物ウイルスを研究対象として基礎・応用両面の研究を行っています。植物ウイルス抵抗性品種の開発に向けて、植物がもつ抗ウイルス免疫機構の解明を行っており、そこで得られた知見を基盤として、ゲノム編集技術等を利用した高度ウイルス抵抗性品種の開発を目指し、国際共同研究を行っています。一方、植物医科学分野も兼担しており、植物の病気に関わる社会的課題に取り組んでいます。2008年に我が国で初めて設立された植物病院の運営に携わり、一般・農業関連団体・企業等からの診断依頼に対応しています。また、我が国における植物病院ネットワークの構築、植物医師の養成、植物医科学の国際展開や国際貢献を目的とした研究活動を行っています。

教育内容

基礎力と実用力を兼ね備えた“ジェネラルなスペシャリスト”養成を目指す

<人材育成の目標>
 

農学は基礎から実用までを幅広く包含する複合研究領域です。そのため卓越した基礎研究力を持ち、さらに実用研究にも精通したバランス感覚に優れた専門家人材の養成を目指しています。

<講義>
 

学部前期課程では総合科目「植物医科学概論」を開講し、初学者向けに植物病理学・植物医科学のイントロダクションを行う一方で、大学院では植物病理学分野の最先端研究を担う研究者や農業現場で活躍する植物医師などを外部講師として招いてオムニバス形式の講義を開講します。

<研究室活動>
 

研究面では教員陣や経験豊富なスタッフとともに定期的に研究報告会を行い、研究の進捗を手厚くサポートします。また、毎年国内学会・国際学会に参加し、成果を挙げた学生さんには積極的に発表してもらっています。その一方で植物病院に寄せられる診断依頼に対して専門家の植物医師のアドバイスを受けながら診断する植物医師研修を実施しています。

<卒業生の進路>
 

研究者志望の学生が多いことが特徴で、修士課程学生の約半数が博士課程に進学します。日本学術振興会特別研究員制度などグラント・奨学金獲得の指導も手厚く行います。卒業生の進路は博士課程が大学教員、大学研究員、国立研究機関、都道府県研究機関、農薬企業など、修士課程が官公庁、県立研究機関、製薬企業、食品企業、農薬企業、金融機関、商社、コンサルタント、IT企業など多岐に亘ります。多数の卒業生が日本農学進歩賞を初めとする関連分野の若手研究者向けの賞を受賞しています。

共同研究や産学連携への展望

植物・微生物のチカラを新たな技術につなげる

<ゲノム編集技術を利用した抵抗性品種開発>
 

病原体は宿主の様々な遺伝子産物を拝借しながら宿主に感染します。そのため、それらの遺伝子を破壊すれば病原体は感染できなくなります。この現象を劣性抵抗性とよびますが、植物ではゲノム編集技術を利用して病原体が感染できない劣性抵抗性品種を創り出すことが可能です。植物ウイルスに関する基礎研究成果を利用して劣性抵抗性品種の開発を行っています。

<植物病原体がもつチカラの利用>
 

今世紀の画期的発見であるゲノム編集において、それぞれCRISPR/Cas9は細菌がもつウイルス分解機構を、TALENは植物病原細菌がもつ機能性遺伝子を利用しています。また、植物ウイルスは強力な遺伝子発現ベクターとして植物における低コストのタンパク質生産を可能にします。これら植物病原体が持つ能力を利用した新たな技術の開発に取り組んでいます。

<植物病院機能の強化>
 

東京大学植物病院は植物の高度医療を担う我が国随一の植物病院として、難防除病害の診断や海外に輸出される種苗の検疫検査などの依頼に対応しています。令和5年4月施行の植物防疫法改正による輸出検疫検査機関登録に向けて準備を進めており、さらなる植物病院機能の強化を図っています。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  植物、ウイルス、細菌、菌類、免疫、検出
キーワード2  :  食料問題、環境問題、植物検疫、パンデミック