福島第一原子力発電所周辺では事故のために漏出した放射性核種によって広範囲で家畜が被爆しました。原発から半径20km圏内(警戒区域内)の南相馬市内で15週間以上飼養されていた5種の原種豚は、放射性核種で汚染されていない飼料で屋内飼育されていたため被爆の程度が低いものと考えられますが、これまでこのような低濃度の放射性核種の被爆を受けた家畜とその後代について詳細に調査・研究を行った例がありません。原発事故の影響を受けた地域の畜産の再興や畜産物の風評被害の防止を支援するためには被爆家畜における影響を精査して異常の有無を明らかにすることが欠かせないので、警戒区域内から附属牧場に救出した後、生殖機能を中心に多面的に健常性の実証研究を進めています。
6月28日に南相馬市から被爆した原種豚(注1)(ランドレース種、デュロック種、中ヨークシャー種、大ヨークシャー種、バークシャー種:)の雌雄28頭を附属牧場に運搬し、牧場内で飼養管理しながらこれらの健康評価、生殖機能評価、被爆量モニタリングなどを継続しているところです。健康であり生殖機能が正常であると判断された場合には、繁殖能力の正常性の実証を進めるために仔豚生産を行う予定です。
一般に豚肉として精肉されて市販されているものは適切な3種類の原種豚を選んで、これらを交配して生産した肥育豚のものです。原種豚は、肥育豚の作出に欠かせないもので、遺伝子資源として重要です。