発表者
菊池 潔 (東京大学大学院農学生命科学研究科附属水産実験所・助教)
宮台 俊明 (福井県立大学海洋生物資源学部・教授)
岩谷 芳自 (福井県栽培漁業センター・主任研究員)
鈴木 譲 (東京大学大学院農学生命科学研究科附属水産実験所・教授)

発表概要

トラフグは経済価値の高い重要な養殖対象魚種であるが、卵巣が猛毒なのに対し,精巣(白子)の食品としての評価が極めて高いことから,雌雄の稚魚を区別して飼育できれば、付加価値の高いトラフグを計画的に養殖することが可能となる。これまで雌雄を外観で区別することは困難であったが,性と強く連鎖するゲノム上の多型を見いだしたことから,養殖用種苗の性を迅速に判定する手法を開発し、このほど特許出願手続きを行なった。

発表内容

東京大学水産実験所では、トラフグの性決定遺伝子の同定を進めており(参考文献)、その過程で、ゲノム上に性と強く連鎖している多型を複数見出した.この多型を利用することにより、福井県栽培漁業センターの協力の下,福井県立大学と共同で、稚魚の雌雄を迅速に判別する技術を開発した。福井県立大学と福井県栽培漁業センターの施設で本判別法を用いた場合、一日に約1500尾の性判別が可能であり、2010年7月には、約14,000尾の稚魚の性判別を行うことに成功した。現在、試験的な出荷に向けてこれらのトラフグの飼育を継続している。今後、本技術の産業への応用が期待される。

本研究は主に、「新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業」(農林水産技術会議)の成果である。また、本技術の基盤となる性決定に関する研究の一部は、科学研究費補助金の助成を受けて実施している。

参考文献

Kikuchi K, Kai W, et al. (2007) The sex-determining locus in the tiger pufferfish, Takifugu rubripes. Genetics 175: 2039-2042.

問い合わせ先

福井県立大学海洋生物資源学部
宮台 俊明 教授
Tel: 0770-52-9602
E-mail: miyadai@fpu.ac.jp

東京大学大学院農学生命科学研究科附属水産実験所
菊池 潔 助教
Tel: 053-592-2821
Fax: 053-592-2822
E-mail: akikuchi@mail.ecc.u-tokyo.ac.jp
http://www.se.a.u-tokyo.ac.jp/japanese.html