カスパリー線形成マシナリーの構成因子を発見

カスパリー線は植物の根に形成される構造体で、植物にとって不必要な物質が植物体内に侵入するのを防ぐ、「皮膚」のような役割を果たしています。本研究では、ESB1と呼ばれるタンパク質がカスパリー線形成に関与することを明らかにしました。

図１ （拡大画像↗）

植物は土壌中から生育に必須な元素（必須元素）だけを選択的に吸収し、不必要で生育に害を与える元素は吸収しないようにしています。カスパリー線はこの選択的な物質の取り込みに関与している構造体です。シロイヌナズナにおいてカスパリー線は内皮細胞と呼ばれる細胞の周囲に形成されます。カスパリー線が内皮細胞間の間を埋める事によって、細胞と細胞の間を通る物質の輸送を内皮細胞で止めることができます。内皮細胞まで到達した物質は、輸送体と呼ばれる選択的な物質の取り込みを行うタンパク質によって内皮細胞に取り込まれ、導管に積み込まれ地上部へ輸送、利用されます。

本研究では、カスパリー線形成に関与するESB1というタンパク質を同定しました。シロイヌナズナの場合、カスパリー線がリグニンよりなるということが示されています。このカスパリー線形成にはこれまでに、CASP, PER64, RBOHFという3つの遺伝子が関与していることが報告されています。これらの遺伝子はリグニンを正しい位置に配置し、カスパリー線を形成するマシナリーを構成しています。今回同定したESB1はこのマシナリーの構成因子の一つであり、カスパリー線を正しい位置に形成するのに必要な遺伝子であること示されました（図１）。また、これまで機能がわかっていなかったESB1の属する遺伝子ファミリー（Dirigent family）のリグニン合成への関与を初めて示しました。

カスパリー線は植物が栄養や水を吸収するのに重要な役割を果たしています。この構造体形成の理解は物質吸収効率を改変した作物の作出に重要な知見を与えるものと期待されます。

本研究は日本学術振興会海外特別研究員奨励費の支援を受けて行われました。