発表者
三浦 覚(東京大学大学院農学生命科学研究科 附属放射性同位元素施設 特任准教授;当時、
       現国立研究開発法人 森林総合研究所 立地環境研究領域 チーム長)

発表のポイント

 東京大学がリードした国際研究チームは、FAOが9月に公表したGFRA2015のデータをもとに、森林の水土保全機能および生態系サービスに関する過去四半世紀の世界の動向について解析し、これらの機能を報告する国の数の増加傾向が続いていることを明らかにしました。

発表内容

図1 世界の国や統治領における水土保全機能が指定された森林面積割合の分布状況(2015年現在)
水土保全機能指定森林面積の割合は、0%と100%の両極端にピークが二極化する分布を示しており、これは、水土保全機能の指定に対して社会経済的な要因が影響していることを示唆しています。 © 2015 Elsevier B.V. CC BY-NC-ND (拡大画像↗)

東京大学農学生命科学研究科三浦覚特任准教授は、世界3か国2国際機関の研究者らをリードしてFAOによる世界森林資源評価GFRA2015のデータを解析し、森林の水土保全機能および生態系サービスに関する過去四半世紀の世界の動向を明らかにしました。これは、他の13の研究チームの解析結果と併せて森林科学の専門誌に特集されました。

GFRAの公表は1948年に始まり、初期には主に木材資源量調査を目的としていましが、1970年代以降はそれを拡張して森林の多面的機能も調査対象とするようになりました。GFRA2015のデータによれば、世界の森林面積は1990年の4,128百万haから2015年の3,999百万haへと3%減少しました。2010年から2015年にかけての森林減少率は、1990年代に比べて約半分に低下しましたが、依然として減少が続いています。2015年現在、そのうち水土保全機能の維持と生態系サービスの提供に指定されている世界の森林面積は10.02億haと10.18億haで、世界の全森林面積の25.1%と25.4%を占めています。水土保全機能や生態系サービスの指定を報告する国の数は25年間一貫して増加し続けており、これは、近年の森林の多面的機能への社会的な関心の高まりを示すものです。

森林は、世界の陸地面積の29%、地球の表面積の8%を覆っているにすぎませんが、人々の暮らしを支え、気候変動の脅威の緩和に重要な役割を果たしています。今回発表された科学者たちによるGFRA2015を網羅する共同解析は、森林・林業分野における非常に重要な成果といえます。GFRA2015の解析特集の緒言と本編を含む13編の論文は、世界の環境問題に関心を持つすべての科学者、森林経営者、NPO、そして政策決定者に新たな着想を促す森林と林業に関する知識の宝庫というべき貴重なデータです。

発表雑誌

雑誌名
「Forest Ecology and Management」
論文タイトル
Protective functions and ecosystem services of global forests in the past quarter-century
著者
Miura, S., Amacher, M., Hofer, T., San-Miguel-Ayanz, J., Ernawati, Thackway, R.
DOI番号
10.1016/j.foreco.2015.03.039
論文URL
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0378112715001784

問い合わせ先

国立研究開発法人 森林総合研究所 立地環境研究領域
チーム長 三浦 覚
Tel:029-829-8231
Fax:029-874-3720
URL:https://www.ffpri.affrc.go.jp/research/dept/03for-site-envi/index.html