本研究科動物細胞制御学研究室のリサーチフェロー増田-中川リリア博士らの論文がPNASに掲載されました。


ショウジョウバエ嗅覚二次中枢への嗅覚情報の入力パターン-解剖学的研究-

昆虫の嗅覚情報処理の原理は、ほ乳類と非常によく似ていることが知られている。匂い分子情報は第一次中枢において構造的特徴として検出される。この情報がさらに上位中枢において統合され、匂いイメージとなると考えられるが、その機構は分かっていない。私たちは、脳の上位中枢の一つであり、更に嗅覚連合学習に必須であるキノコ体のカリックス(樹状突起領域)に注目し、一次中枢の投射神経細胞(PNs)とキノコ体神経細胞(KCs)の間の結合様式をショウジョウバエの幼虫を用いて研究した。最初にKCの入力端子である34個のカリックス糸球体を、同定して投射地図を作製した。その結果、PNsとカリックス糸球体の間の結合様式の特異性が明らかになった。逆に、KCsのカリックス糸球体への投射様式は糸球体のランダムな組み合わせを示し、個々のKCは約6個のカリックス糸球体から入力を受けることが明らかになった。これらの結果は、KCsがいくつかの糸球体の入力情報の組み合わせを統合しているモデルとよく一致し、嗅覚経路の上位中枢における神経結合様式を最も完全に証明するものである。
なお、本研究にご支援とご助言を頂いた応用動物科学専攻動物細胞制御学研究室の高橋伸一郎助教授、分子細胞生物学研究所の多羽田哲也教授および伊藤啓助教授に深く感謝致します。

Liria M. Masuda-Nakagawa, Nobuaki K. Tanaka, and Cahir J. O'Kane
Stereotypic and random patterns of connectivity in the larval mushroom body calyx of Drosophila
PNAS 2005 102: 19027-19032; published online before print December 15 2005, 10.1073/pnas.0509643102
http://www.pnas.org/cgi/content/abstract/0509643102v1


 

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