東京大学農学生命科学研究科プレスリリース

2007/9/7

「テトラポッド型人工骨の開発」

発表者:東京大学大学院農学生命科学研究科附属動物医療センター 
センター長 教授 佐々木 伸雄(獣医外科学研究室)
共同研究者:東京大学医学部附属病院 ティッシュ・エンジニアリング部
 副部長・教授 鄭 雄一
 株式会社ネクスト21
 ガウス株式会社

発表概要

テトラポッドの形状をした人工骨を開発した。これらは相互に組み合うと、血管、骨芽細胞、破骨細胞等が侵入しやすい連通孔を構成するため、従来の顆粒型の人工骨材料に比較し、より早期に安定した骨形成を促す、足場を提供する。
このページのTopへ

発表内容

α3リン酸カルシウムとリン酸8カルシウムからなる材料を用い、金型形成により外径1mmのテトラポッド型人工骨を開発した。この人工骨は相互に組み合わさると内部に100-300μmの連通孔が形成される。ここから血管新生が生じ、それに伴って骨芽細胞、破骨細胞が浸潤し、早期に骨形成、破骨細胞による人工骨の吸収が起こる。
  また、これらが組合わさった構造は強固で、従来の顆粒状の人工骨に比較し、移植部の強度は高く維持される。このような特性により、種々の骨欠損部に対する、足場(スキャフォールド)としての有用性は従来の人工骨より飛躍的に高いと考えられる。
  その有用性ならびに安全性に関し、まずウサギを用いて大腿骨欠損部に充填する実験を行ったところ、4週後には、この人工骨の内部にまで骨芽細胞が侵入していることが確認された。さらにビーグル犬を用い、同様に大腿骨遠位に円筒状の骨欠損を作製し、顆粒状の人工骨を対照としてテトラポッド型人工骨を埋植した。その結果、テトラポッド型人工骨では、内部への血管新生、骨芽細胞の侵入が多く、かつ4週後においても、移植部の形態に変化がなかったのに対し、対照とした人工骨では、表層に埋植した人工骨が形状の変化によって内部に落ち込み、そのため、表層に線維性組織が増殖した。
  この結果から、本人工骨が安定して移植の形状を保持し、あわせてスキャフォールドとしての機能を長期に維持する可能性があるのに対し、従来型の人工骨では、強度不十分のために、移植部に形状の変化等が生じ、好ましくない線維性の組織の増殖を招く可能性のあることが示唆された。
  これらは、この人工骨の最大の特徴と思われ、さらにこれらの実験を通して安全性が確認されたことから、多くの骨欠損症例に適応可能ではないかと考えられた。
  今後、骨誘導作用を有する生理活性物質をこれらの人工骨と組み合わせることにより、より効率的な人工骨材料を作製できるものと思われ、さらに将来性が見込まれる。
このページのTopへ

 

問い合わせ先

・東京大学大学院農学生命科学研究科附属動物医療センター 
             センター長・教授 佐々木伸雄(獣医外科学研究室)
                 E-mail : asasaki@mail.ecc.u-tokyo.ac.jp
  ・東京大学医学部附属病院 ティッシュ・エンジニアリング部 
             副部長・教授  鄭 雄一
                 E-mail: uichung-tky@umin.ac.jp
  ・東京大学医学部附属病院 広報企画部(担当:山岡)  
                 電話:03-5800-9188(直通) 
                E-mail:pr@adm.h.u-tokyo.ac.jp  
 
東大病院ホームページからも、本プレスリリースの閲覧が可能です。
URL: http://www.h.u-tokyo.ac.jp/


このページのTopへ

 

東京大学大学院農学生命科学研究科
〒113−8657 東京都文京区弥生1−1−1 www-admin@www.a.u-tokyo.ac.jp
Copyright © 1996- Graduate School of Agricultural and Life Sciences, The University of Tokyo