プロフィール

秋山 拓也

秋山 拓也

AKIYAMA Takuya

専攻 農学国際専攻 Department of Global Agricultural Sciences
研究室 国際植物材料科学研究室 Laboratory of Global Plant Material Science
職名 准教授 / Associate Professor

一般の方へ向けた研究紹介

植物細胞壁を解剖する、化学的に。

 化学構造をキーワードに植物細胞壁、特に、樹木などの木質細胞壁が生成する仕組みや、各種植物のバイオマス資源としての特徴を明らかにする研究に取り組んでいます。木本植物の木部の細胞壁はセルロースやヘミセルロースの多糖類と共に、リグニンと呼ばれる木質化に深く関係する高分子で構成されています。このリグニンの構造を調べると、多くの天然有機化合物がそうであるように、化学構造に残されている生成履歴を基にどのような仕組みで生成したのかを推定できます。例えば、立体化学構造にはモノマーから高分子化する際の履歴が残されています。これを調べたところリグニンは光学不活性であり、酵素等による立体制御を受けずに重合していることが確かとなりました。これはセルロース、タンパク質、核酸などの天然高分子の立体化学が生合成時に厳密に制御されているのとは対照的です。この他にも高分子の形状や反応性を決定付ける部分構造など、バイオマス資源の性状を特徴づけている重要な情報が細胞壁成分の化学構造に含まれます。これらの情報を化学的な手法を用いて引き出すことに取り組んでいます。

教育内容

細胞壁成分と植物の役割

 陸上の植物は重力に逆らって自重を支え、水を汲み上げ巨大化するために作り上げられた細胞壁から成る構造物です。樹木を始めとするこれら植物体は、二酸化炭素の固定、腐植分解、土壌有機炭素、石炭化、再生エネルギー利用など、地球上の炭素循環と深く関わりをもつことがよく知られています。こんな壮大なスケールで語りだすと、私共が研究で取り組んでいる細胞壁成分の違いなんて些細なことにみえるかもしれません。しかし、種、部位、組織の違いにより植物体の形態や細胞壁の形は大きく異なり、それと連動するかのように細胞壁を構成する高分子成分にも差異がみられます。その成分の差異の影響は、細胞壁の物性、植物としての役割を終えた後の腐植分解、そして植物資源としての利用法にも及ぶと考えられます。学生の方々には、いっときでも構わないので一つの専門分野、例えば細胞壁化学の分野に深く浸っていただき、その上で、背景にある炭素循環や植物資源の利用について、1人の研究者・専門家としての視点で眺め、どう関わっていくのか一緒に考えていくことができればと思います。

共同研究や産学連携への展望

植物バイオマス原料の素性を明らかにする

 植物成分、特に高分子成分についてはまだ不明な点が多く残されている現状があり、バイオマス原料がどのような物質であるのか、化学構造的側面から知ることは重要だと考えています。構造的特徴が明らかになると、化学反応性が予測可能となり、どのように化学変換、生物変換していくかのアイデアを得るための有用な情報となるはずです。細胞壁(=バイオマス資源)の反応性の理解に要となる成分に焦点をあてた構造研究として、例えば、リグニンの立体化学構造、ビフェニル、ジアリールエーテル、およびスピロジエノン構造の研究に取り組んできました。各種バイオマス原料の素性を明らかにして利用研究に役立てることが構造研究の目的です。これまで木材を対象としてきましたが、樹皮、農作物残渣、資源植物、工業リグニンなど様々なバイオマス資源に取り組んでいきます。それらの化学構造的特徴に基づいて整理・分類することで反応性を予測可能とし、どのように化学変換、生物変換することができるのか、といった利用法を設計する上で有用な情報を引き出していきたいと考えています。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  植物、細胞壁、炭素循環、炭素固定、天然物化学、進化、木質、樹木、農作物残渣、熱帯植物、紙パルプ、腐植物、高分子、化学構造、生合成、化学分解、NMR、木材、樹皮、抽出成分、分析、化学反応、木化、リグニン、タンニン、プロアントシアニジン、スベリン、黒液、バニリン、ビフェニル、スピロジエノン、リグナン、セルロース、ヘミセルロース、立体化学構造、鏡像異性体、ジアステレオマー
キーワード2  :  再生エネルギー、植物バイオマス、リグノセルロース、森林破壊、森林再生、温暖化