プロフィール

富士原 和宏

富士原 和宏

FUJIWARA Kazuhiro

専攻 生物・環境工学専攻 Department of Biological and Environmental Engineering
研究室 生物環境工学研究室 Laboratory of Bioenvironmental Engineering
職名 教授 / Professor

一般の方へ向けた研究紹介

自然光とそっくりの光を作って自由に操る

 自然環境下での植物生産や植物を利用した有用物質生産の効率を高めるための研究、さらにはそのための基礎となる植物環境応答を調べる研究では、注目する環境要素(例えば気温など)の影響を調べる必要があります。ところが、光についての環境要素の一つであるスペクトル(厳密には、相対分光分布)だけは、これまで自由に制御できるような光源システムが存在しなかったため、自然光のスペクトルを再現した光を照射した実験を行うことができませんでした。
 そこで、植物に照射する「光の強さ」と「光のスペクトル」の両方(厳密には、分光分布)を自由に制御できる光源システムの開発に挑んできました。2022年には、直径30 mmの被照射面積に対して、380~940 nmの波長範囲について地表面で観測される太陽光の分光分布を高精度で再現可能で、しかも自然光の時間変化も自由に再現できる画期的な光源システムを完成しました。LED人工太陽光光源システムです。
 今後は、被照射面積の拡大に向けたシステムのスケールアップ、波長範囲の拡大などの高機能化・汎用化に加えて、視覚関連研究、化粧品開発関連研究、美術館特殊照明などの農学・植物科学を超えた分野への応用と展開を進めていく予定です。

教育内容

LED植物工場や温室用の新しい環境調節法を一緒に開発しませんか?

 当研究室が担当する主要な講義としては、生物環境工学、生物環境要素学、植物環境システム学があります。当研究室では、生物環境物理学、農業気象学、生物環境調節学、植物生理生態学などを基礎として、おもに温室や植物工場における植物生産を意識した環境調節に関する内容を研究・教育しています。このため、共同研究などで関係する企業には、温室、植物工場関連の企業(建設・設備系も含む)が比較的多いですが、私個人の研究テーマとの関係で、LED照明機器、冷蔵庫、流量制御機器、園芸用農薬、整水器などのメーカーと協力する(した)こともあります。
 当研究室に配属された学生に対しては、生物・環境工学専修/専攻の教育目標に加えて、技術文書作成能力とプレゼン能力の向上を意識しています。これらの能力は、当研究室の専門分野と異なる分野に就職・進学した場合でも、知的作業を生業とする限り重要であるからです。
 近年の卒業生・修了生の進路としては、大学院進学、国立・民間研究機関、大学教員、建設・設備企業、HR事業企業、電力会社、半導体製造企業があります。また、最近の修士論文テーマとしては、「パルス光照射がコスレタスの生長および受光態勢に及ぼす影響」、「小型強制換気温室モデルを用いたCO2施用効率に基づく強光時CO2施用法の評価」などがあります。

共同研究や産学連携への展望

自然光を高精度で再現できるLED人工太陽光光源システムの新たな活用の場の開拓

 自然環境下での実用的な植物生産あるいは植物利用型の物質生産に応用可能な知見を得ようとすると、自然環境に近い分光分布の光を用いた研究が不可欠です。そのためには、種々の分光分布の光を作出可能で、しかも異なる分光分布の光を短い時間間隔で連続して作出可能な光源システムが必要となります。そこで、光植物学研究で取り扱われる波長範囲について地表面における太陽光(以後、単に太陽光)の分光分布とほぼ同一の分光分布の光を作出可能であり、また異なる分光分布の光を短い時間間隔で連続して作出可能なLED人工光源システムの開発を行ってきました。2022年には、直径30 mmの被照射面積に対して、380~940 nmの波長範囲について快晴時の太陽光の分光分布とほぼ同一の分光分布の光を作出可能な光源システムを完成しています。日の出から日没までの分光分布の時間変化の再現やその逆順の再現、市販の種々の蛍光体利用白色LEDの分光分布の再現なども可能です。 今後は、被照射面積の拡大に向けたシステムのスケールアップ、波長範囲の拡大などの高機能化・汎用化に加えて、視覚関連研究、化粧品開発関連研究、美術館特殊照明などの分野への応用・展開を、企業等との連携・共同研究も絡めて進めていきたいと思います。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  植物、温室、植物工場、LED、環境制御、環境調節、ガス環境、光環境、水環境、太陽光、自然光、太陽光光源、分光分布、パルス光、周波数、デューティ比、CO2施用、純光合成速度、ヒューリステック、デジャブ・データ、施設園芸、農業気象、生物環境調節、植物組織培養
キーワード2  :  都市農業、気候変動適応