プロフィール

喜田 聡

喜田 聡

KIDA Satoshi

専攻 応用生命化学専攻 Department of Applied Biological Chemistry
研究室 栄養化学研究室 Laboratory of Nutrition Chemistry
職名 教授 / Professor

一般の方へ向けた研究紹介

農学部で体験する本格的な脳科学

 試験が近づくと、もっと記憶力が良ければと感じると思います。しかし、我々の脳は毎日の体験をコンピューター並に刻々と記憶しています。美味しかった食べ物や、皆でワイワイして食べた食事は、いつまでも楽しい記憶として残りますよね?私の研究室では、美味しい食べ物の記憶は脳のどこに蓄えられ、また、楽しい記憶を思い出すと、なぜまた楽しい気分になれるのか、そんな記憶のメカニズムを研究しています。食経験の記憶を研究することで、食物の好き嫌いのメカニズムを解明し、好き嫌いを無くす方法を開発することを目指しています。同時に、脳と栄養素の関係を解明しようとしています。脳は体の中で最もエネルギーを消費する組織で、毎日の記憶に多くのエネルギーが必要です。また、脳が働くためには、全ての必須栄養素を摂取する必要があります。記憶力を増強する栄養素が見つかれば、認知症など記憶力が低下する病気の改善に役立ちます。マウスでそのような栄養素も見つかっており、お勧めは「記憶を思い出す」能力を高めてくれる栄養素です。この栄養素の作用やメカニズムを調べています。ヒトでも効果が確かめられれば、試験の前に飲むと、よく思い出せるドリンクの開発も可能です。

教育内容

農学系で実践する脳科学

 食は健康に必要であるだけではなく、心を幸せにする役割を有しています。そこで、好きなものだけ食べたいのが本音ですが、偏食や好き嫌いは生活習慣病など様々な疾患の発症リスクとなります。私のラボでは、食体験の記憶の積み重ねで食習慣が形成されることに着目し、どのような心理メカニズムで食習慣が形成されるかを研究しています。好きなもの、嫌いなものを食べた経験がどのように記憶され、その後に何を食べるかを意思決定するメカニズムを最先端の脳科学技術を用いて解き明かします。さらに、記憶の基本メカニズム、記憶力増強法の開発、脳疾患の改善方法の開発など基礎と応用の脳科学研究を行っており、PTSDの臨床試験でも成功しています。学生さんの研究テーマは入室後に希望を聞いてディスカッションを重ねて設定します。なぜ、お酒が好きかのメカニズムも研究していますが、このディスカッションを通して始まりました。ラボでは思ったことを自由に発言することを求め、研究室を訪れる多くの海外研究者と触れあうなどで、ステレオタイプではない「やんちゃな」エリート育成を目指します。卒業後は博士課程進学、また、大手企業に就職となります。博士大学院生には日本学術振興会特別研究員の割合が高いです。

共同研究や産学連携への展望

食嗜好性の心理メカニズムを解き明かす

 美味しいものを食べると幸福感を感じます。誰もが経験する別腹食い、衝動食い、ストレス食いなどは本来必要とされない不思議な食行動です。また、過食症や拒食症の生物学的メカニズムは不明です。一方で、偏食や好き嫌いは生活習慣病等の原因となりますが、健康第一の食習慣への改善は精神的に苦痛であり容易ではありません。しかし、食の嗜好性は、食経験、すなわち、食記憶の積み重ねにより変容することも事実です。以上のような食の心理メカニズムは謎に包まれています。私のラボでは、食の嗜好性を司る心理メカニズムの解明を試みており、現在、マウスを用いてヒトの心理動向に類似した食行動解析課題を開発し、食嗜好性が変容し、食により幸福感(快情動)が産まれるメカニズムの解明を試みています。一方で、現在までにマウスの研究成果を応用してPTSDの治療方法開発にも成功しています。そこで、共同研究や連携を通じて、ヒトの食の心理メカニズムの解明も行い、疾患リスクの高い食習慣を改善する技術、さらには、健康な食を美味しく食べて幸福感が産まれる技術の開発を目指したいと考えています。一方、身近な栄養素を用いて記憶能力を向上させる技術も開発しており、ヒト対象の試験でこの効力を実証も試みたいと考えています。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  「脳科学」、「記憶」、「食行動」、「食嗜好性」、「神経科学」、「脳疾患」、「栄養」、「動物」、「食
キーワード2  :  「摂食障害」、「精神疾患」、「認知症」、「食糧問題」、「生活習慣病」、「食の好き嫌い」、「偏食」、「ストレス