プロフィール
専攻
農学国際専攻
Department of Global Agricultural Sciences
研究室
国際情報農学研究室
Laboratory of Agro-informatics
職名
教授 / Professor
一般の方へ向けた研究紹介
原発事故後の真の復興を実現するための農学
2011年3月の東日本大震災に伴う原発事故により福島県浜通り地域が放射性セシウム(RCs)で汚染されました。そのため一部の地域住民は放射線による被ばくを避けるために強制的に避難せざるを得ませんでした。私は土壌物理学の専門家として農地土壌中の粘土粒子とRCsの吸着特性に着目し、2011年6月から福島県飯舘村に通い始め、農家自身ができる除染方法の開発に取り組んできました。その結果、汚染土を泥水にして1m深さの素掘りの穴に流し込み、水がなくなった後に汚染されていない土を50cm以上かぶせればその上で普通にイネを栽培してもRCsは地下に移動しないことを現地実験で示しました。国の除染が進み、避難を強いられていた住民が戻り始めましたが、放射能に対する風評被害や獣害、農業用排水等の農業インフラ整備の遅れのために原発事故前のような農業は再開できていません。そこで、現在は真の復興を実現するために新しい農業を創出することが重要と考え、IoTやICTを導入した堆肥づくりや獣害対策に取り組んでいます。こうした現場ニーズに応える農学が高齢化社会を迎える農業農村地域が抱える課題解決につながると信じています。
教育内容
なぜか研究室OGが元気に活躍しているんですよね!
教育活動内容
現場から課題を自ら発見し解決する学習は農学教育には不可欠です。私はその農学教育法をFPBL(Field and Project-Based Learning)と名づけて実践しています。マスコミ報道や文献を見てわかった気分になるのを防止し、現場を自分の目で見て歩いて本当の現実を学生に実感させるために、2012年10月から学生を福島県飯舘村の現地に連れていく教育プログラムを実践しています。
人材育成の目標
私は人間教育を第一と考え、学生の成長過程に応じて各段階(駒場、農学部、大学院修士課程、大学院博士課程)で必要最低限の能力を身につけさせるよう柔軟に学生教育を進めてきました。特に、女子学生教育が重要だと考えています。詳細についてはこちらをお読みください。
http://www.iai.ga.a.u-tokyo.ac.jp/mizo/vision/education_vision.pdf
人材輩出の実績
卒業生の進路:国家公務員、商社、大学教員、建設会社、コンサルタント、民間研究所など
Web検索可能な卒業生:山下彩香(2009学部)、横川華枝(2013修士)、川名桂(2013学部)、井出留美(2014修士)
共同研究や産学連携への展望
飯舘村で泥臭い日本型シリコンバレーを一緒に作ってくれる企業との連携を募集!
私は電源も通信設備もない国内外の農地で小型太陽光パネルと SIM を組み合わせてインターネット経由で画像を含むデータを自動取得するフィールドモニタリングシステムを運用してきた実績があります。最近はド田舎の情報基盤整備に力を入れています。コロナの影響でオンライン在宅勤務が進むなど、働き方が見直されてきていますが、地方では十分なインターネット環境は整っていません。これまでの経験を活かし、いま飯舘村の山中にソーラーパネルを設置してカメラを作動させ、リアルタイムに画像を撮影して、山の中の温度、湿度、動物の出没をモニタリングしています。山に囲まれ携帯電話の電波も入らない場所の多い飯舘村は農業以外の産業が少なく、このまま放っておくと消滅してしまうかも知れません。政府の掲げるデジタル田園都市国家構想に先駆けて農村地域でIoT/ICTを活用しながら農業や新しい産業を営み、そして心豊かな生活を楽しめるようなインフラ整備の農学を展開したいと考えています。泥臭い通信インフラ整備とIoT/ICT機器開発に関心を持ち、一緒に日本型シリコンバレーを作ってくれる企業との連携を望んでいます。
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
キーワード
キーワード1 : 福島、復興、除染、土壌、放射能、農村、インフラ整備
キーワード2 : 高齢化社会、復興、農村DX、コロナ、食料問題