プロフィール

中嶋 康博

中嶋 康博

NAKASHIMA Yasuhiro

専攻 農業・資源経済学専攻 Department of Agricultural and Resource Economics
研究室 食料・資源経済学研究室 Laboratory of food and resource economics
職名 教授 / Professor

一般の方へ向けた研究紹介

食の信頼の役割の解明

 食品偽装という言葉を聞いたことがあるでしょうか。2008年前後に原料産地を偽ったり、賞味期限を勝手に延ばしたりした様々な事件が連日テレビや新聞で報道されました。これらの事件では、食中毒などの直接的な食品事故は起きませんでしたが、しかしこれをきっかけに食品業界の信頼は大きく失われたと言われたのです。私たちの研究室では、この一連の事件をきっかけに、食の信頼について研究を始めました。食の信頼は日々の食生活にとって大事です。なぜでしょうか。私たちは生まれてから亡くなるまで、何かを食べ続けることになります。毎日、一日におおむね3回、毎回複数の食材を組み合わせた食事をすることが多いですね。皆さんは食事の内容をどのように決めていますか?食べるものを一つひとつ吟味しているでしょうか。手を抜くわけではないにしても、それほど注意深く扱っていないかもしれません。それは食べようとしている食品を信頼しているからです。もしくはその食品を販売しているお店や製造しているメーカーを信頼しているからです。食の信頼は私たちが手軽に楽しく食事をするための基礎なのです。その成立条件は何かを私たちは研究しています。

教育内容

食の安全・安心に関するフードシステム研究

 食品は、農業者、集荷業者、加工業者、運送業者、卸売業者、小売業者など、数多くの食品事業者が連携することで、私たち消費者のもとへ届けられます。この仕組みがフードシステムです。私たちが安心して食品を購入し食べることができるのは、これらの数多くの食品事業者が安全性や品質管理に注意を払いながら、それぞれの業務をしっかり遂行しているからです。フードシステムを構成する事業者が適切に業務を遂行していると私たちが予想できること、このことを食の信頼と言います。一部の業者が手を抜いていそうだ、安全性が危うそうだと懸念される状態だと、食の信頼が失われたということになるのです。フードシステムにおいて、食の安全の確保は絶対守るべき課題です。しかしそれだけでなく、日々の農産物や食品をいかに安定して供給するか、それらの価格をいかに適切に決定するか、災害など不測の事態にいかに備えるか、食の生産を通じていかに地域経済を振興するかなど、数々の「いかに」の課題があります。それらをフードシステム論という枠組みで経済学的に研究を進めています。それらの研究のすべての基礎となるのが消費者の食料消費の意識と行動ですが、その動向を探るべく、毎年テーマを設定してWEBアンケート調査とそのデータを用いた計量経済分析を行っています。

共同研究や産学連携への展望

食のエシカル消費の可能性

 政府は昨年発表したみどりの食料システム戦略において、今後強力に環境保全型農業を推進することとし、たとえば2050年までにわが国の有機農業の栽培面積を全体の25%にまで引き上げる目標を定めました。これを実現するのは消費者の支持が伴わなければなりません。みどりの食料システム戦略における政策目標達成に向けた工程を考えると、エシカル(倫理的)消費の可能性がどの程度あるのか、それをどのように喚起していくべきかの検討を急ぎ進めるべきです。その研究を進めるため、食料消費行動における倫理的志向の基礎的研究や、消費者の倫理的要素に関する認知度に関して実践的研究を行って、倫理的要素への消費者ニーズを明らかにしているところです。農産物における倫理的要素へのニーズがあると把握できたとしても、倫理的要素に配慮した農業生産が実現していくには、その生産実態を正確に消費者に伝える仕組みを構築しなければなりません。生産から消費までのフードシステムの構造を踏まえたトレーサビリティや認証・表示制度の設計が必要だと考えております。そのための実務家の方々との共同研究を検討しているところです。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  フードシステム、食料消費、食の信頼、食の安全、農村資源、土地改良、農業水利
キーワード2  :  農業政策、食料政策、農村政策、食品表示、認証制度、農村ガバナンス、人口減少、高齢化、食の信頼、食の安全