プロフィール

甲山 哲生

甲山 哲生

Tetsuo I. Kohyama

専攻 生圏システム学専攻 Department of Ecosystem Studies
研究室 森圏管理学研究室 Laboratory of Forest Ecosystem Studies
職名 助教 / Research Associate

一般の方へ向けた研究紹介

遺伝子と生態系をつなぐ生物多様性の役割の理解に向けて

 急速に進む地球環境の変化は、生物多様性にどのような影響を及ぼしているのでしょうか?この疑問を明らかにするためには、生態学分野の幅広い時空間スケールの研究を統合することが必要です。
 私は、植物と植食者や送粉者、あるいは、宿主と寄生者や病原体といった生物種間相互作用を通して、生物がどのように進化し、多様化してきたのかを研究しています。また、野外生物集団の遺伝的多様性が、集団の持続性や環境変動に対する頑健性にどのような影響を及ぼすのか?、群集を構成する集団の多様性や構造が、群集全体の生産性などの生態系機能にどのような影響を及ぼすのか?、といった異なるスケールの研究を統合することで、ゲノムスケールと生態系スケールをつなぐ生物多様性の機能の解明を目指しています。
 現在は、(1)東アジアにおける森林の生産性の緯度勾配とその生成要因の解明、(2)植物が放出する揮発性有機化合物と葉の表層に生息する微生物の相互作用の解明、(3)高山帯の積雪分布の不均一性が植物の集団遺伝構造に与える影響の解明といった研究に取り組んでいます。

教育内容

生物多様性の研究アプローチは多様で多彩

 わたしたちの研究室では、学部3年生を対象に「森圏管理学」と題した講義・実習を担当しています。講義では、おもに生態学的な視点から、森林生態系を構成する生きものの多様性や生態系機能、物質循環、人間活動との関わり、管理・保全について学ぶことができます。実習では、附属演習林などを利用して、日本の様々な森林を肌で感じてもらいながら、森林における生態学研究の基礎的な野外調査法や、遺伝子解析、化学分析、データ解析の知識・技術を習得することを目的としています。
 本研究室で研究している人たちは、研究対象とする生きものは植物や動物、微生物など様々で、フィールドワークに力をいれる人、ラボワークに力をいれる人、統計モデリングやシミュレーション研究に力をいれる人、全てこなしてしまう人など、研究スタイルもとても多様です。森林やそこに暮らす生きものが好きという学生は、ぜひ私たちと一緒に研究しませんか?

共同研究や産学連携への展望

ビッグデータ時代の生物多様性研究

 本研究室では、フィールド科学を主体とした研究により、生物多様性が生態系機能に及ぼす影響の解明に取り組んでいます。その目的達成のために、大規模な個体群動態データや、形質データ、遺伝子型データを解析する技術が必須となります。近年のリモートセンシング技術や遺伝子解析技術の発展により、データの質・量ともに飛躍的に増大しています。その一方で、大量データの解析技術の開発がデータ獲得に追いついていない状況も見受けます。
 私は、こうした手法開発に積極的に取り組み、そのソースコードを公開しています。例として、環境省モニタリングサイト1000プロジェクトで集積されている数百種・数万個体からなる長期森林観測データに基づいて、森林群集の加入率・死亡率や生産性などの動態パラメータを一括で解析し、可視化するソフトウェアを開発・公開しました(https://github.com/kohyamat/monisenforest-docker)。また、ゲノム中のマイクロサテライト領域を標的として、複数種・複数遺伝子座・数千個体を一括ジェノタイピングする手法を確立し、次世代シークエンサーによる大量データを解析するためのソフトウェアも開発しました(https://github.com/kohyamat/massgenotyping)。こうした大量データの基づく、多次元的な生物多様性のデータベースを作成し、研究を越えて広く社会実装に資することを目指しています。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  森林生態系、高山生態系、群集構造、生産性、生物多様性、種間相互作用、進化、種分化
キーワード2  :  気候変動、生物多様性保全