プロフィール

栃内 亮太

栃内 亮太

TOCHINAI Ryota

専攻 獣医学専攻 Department of Veterinary Medical Sciences
研究室 獣医衛生学研究室 Department of Veterinary Pathophysiology and Animal Health
職名 助教 / Research Associate

一般の方へ向けた研究紹介

循環器疾患や医薬品の毒性メカニズム解明と動物の循環器機能を解析する新規技術開発

 主に循環器系を対象とした病態生理学的研究により、ヒトや動物の健康を維持に資する基盤知識や技術を提供することを目指しています。
 循環器の機能は、心臓、血管、肺、腎臓、自律神経、脳あるいは免疫器官などが連関した複雑系により維持されています。病態モデル動物が見せる複雑な whole body (細胞や臓器レベルではなく、それらが総合された動物個体レベル)での生命応答を一つ一つ解きほぐしていく作業を積み重ね、疾患の発生や医薬品の毒性メカニズムの解明に繋げています。
 また、実験動物の循環器機能(心拍、血流など)や行動を解析するための新規技術開発に取り組んでいます。近年では、ヒト化小型実験動物など、ヒトにより近い様々な動物モデルが開発されており、医学や薬学研究の発展に資することが期待されています。一方で、ヒトにおいては健康診断や医療機関で実施される検査のように、心拍や血流などに関する生体情報を取得する技術が多く存在しますが、小型で動きの制御が難しい実験動物にも応用できる検査技術には限りがあります。新規技術により小型実験動物からヒトと比較できる多くの生体情報を取得可能にすることで、動物種差を越えてより実践的な研究を展開することが可能になります。

教育内容

生命現象を複合的に見渡して生体に隠された複雑な謎を読み解く!

 獣医師あるいは動物の専門家として大切な能力の一つは、目の前の動物が見せる変化の裏に隠れた複雑な生体維持機構を理解し、一つ一つを解きほぐしてメカニズムを説明できることであると考えています。動物個体から得られる情報を、細胞科学や分子科学、機械工学の専門家などから提供される知見とも統合して、動物に起きている複合的な現象を理解(診断)することが必要です。シンプルな例を挙げると、薬を投与して心拍数が上昇した際に、薬の心筋細胞に対する直接作用で機序を説明できる可能性があります。一方、血管平滑筋への作用による血圧低下や、水の排泄が亢進して脱水したときにも心拍数は上昇し得ます。はたまた、脳神経系に作用して自律神経バランスが変わることや、用いた検査機械によってはその原理に依存したアーティファクトの可能性も考えなくてはいけません。
 現在担当している動物衛生学や毒性学実習あるいは卒論指導(テーマ例:抗がん剤の毒性軽減方法の開発、筋ジスロトフィー心筋症の治療法開発、など)などでは、生命現象を多面的・多角的に捉える訓練を重視し、既知の知見で説明できない事象を見出した際には、前述の各専門家と議論、連携してトランスレーショナル・リサーチ(橋渡し研究)を展開できる人材を育成することを重視しています。

共同研究や産学連携への展望

小型実験動物を用いた非臨床心毒性解析や循環器機能の解析技術開発

 医薬品の心毒性は、当該医薬品の開発中止(ドロップアウト)や市場撤退理由の大きな原因であることから、開発戦略における安全性予測・評価戦略は重要な命題です。特に、多大なコストを費やしてたどり着いた開発後期でのドロップアウトは製薬企業の経営に与える影響は大きく、医薬品の高額化が進む中、医薬品の研究開発環境および薬価を保つためには、非臨床試験における特に効率的な毒性評価と安全性予測が望まれています。一方で、非ヒト霊長類の利用が難しくなってきており、ヒト化技術などにより小型実験動物を効率的に活用することが求められています。
 このような中、私たちは小型実験動物を用いて特定の抗がん剤の心毒性解析や、毒性克服手法の開発に取り組んで参りました。また、小型実験動物から循環器指標を測定するために光学センシング技術を応用して脈波解析技術(テイルカフやパルスオキシメーター)の確立なども行っております。これらの技術にご興味ある方は是非ともご相談いただけますと幸いです。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  動物、ラット、マウス、実験動物、心臓、血管、心筋、心毒性、心機能、血流、血圧、脈波、自律神経、心拍変動、毒性、医薬品、抗がん剤、微小管、パルスオキシメーター、テイルカフ、光学センサー、筋ジスロトフィー、心筋症、心機能
キーワード2  :  医薬品、化学物質、食品、毒性、安全性、健康、非臨床試験