プロフィール

横山 朝哉

横山 朝哉

YOKOYAMA Tomoya

専攻 生物材料科学専攻 Department of Biomaterial Sciences
研究室 木材化学研究室 Laboratory of Wood Chemistry
職名 教授 / Professor

一般の方へ向けた研究紹介

木材化学って何?

 私は生物材料科学専攻木材化学研究室に所属していますが、生物材料科学専攻では、化石資源に頼らない循環型社会の構築を目指して、バイオマスと呼ばれる再生可能な生物由来の有機資源(主に木材)を有用物質に変換する過程に関する基礎および応用科学を、学術的に追求しています。木材化学研究室は、これらの学術分野のうち、木材の化学的な利用のための基盤づくりを担っています。具体的には、木材の主要構成成分であるセルロース(多糖類)、ヘミセルロース(多糖類)、およびリグニン(芳香族高分子化合物)の化学構造と様々な化学反応における反応性の詳細を、研究しています。これらの中でも、リグニンの化学的な構造と反応性はよくわかっておらず、これがバイオマス変換の高効率化にとって大きな障害となっているため、近年はリグニンを主な研究対象としています。木材の化学的な利用では、セルロースを他の2成分から分離して単離し、紙やセロハン等の原料として用いること等が、典型的な事例です。リグニンの化学構造と化学反応を研究することで、この単離やその他の過程における化石エネルギー消費量や環境負荷を、最少化することができます。また、近年は、リグニン由来の有機資源を有用物質として利用することも重要になってきており、これの達成のためにも、リグニンの化学構造と化学反応性を研究することが、大いに役立ちます。

教育内容

木材化学教育で何が身に付く?

 農学部生物素材化学専修では、バイオマスと呼ばれる再生可能な生物由来の有機資源(主に木材)を有用物質に変換する化学的過程に関して、学ぶことができます。私は、生物素材化学専修の教育の中で基礎的な分野を担っており、主に木材化学、植物バイオマス化学、および有機反応機構の講義を担当して、木材細胞壁主要3構成成分の化学構造や化学反応と、これらの理解において重要となる有機化学反応の機構について、解説しています。これらで蓄積した知識を基に、木材化学研究室に所属する学部学生には、卒業研究として、リグニンや糖に関する化学反応を機構的に解析・考察し、学術研究と自然科学的思考法の初歩を、学んでもらっています。私は、大学院教育では木材化学特論Ⅰ、木材化学特論Ⅱ、およびバイオマス化学特別講義Ⅰの講義を担当しており、これらでは、学部講義と同分野の内容をより高度で詳細に解説しています。木材化学研究室に所属する大学院学生には、卒業研究と同分野に関する未知課題の設定、この課題を達成するための実験の構築・実施、および実験結果の考察による新規な学術的提案、を主体的に行ってもらい、これらを基にした修士論文あるいは博士論文の制作を通して、学術研究と自然科学的思考法について、深く学んでもらっています。自然科学的思考法は、卒業・修了後に社会人としても必須ですので、これの修得に特に注力しています。

共同研究や産学連携への展望

化学で操るバイオマス変換

 バイオマス(主に木材)の化学的利用においては、木材細胞壁主要3構成成分の分離や各成分の有用物質への変換を行うバイオリファイナリーが、前処理あるいは本処理として必須です。私はこれまでに、バイオリファイナリーを目的とする様々な化学処理における各成分の反応性を、機構的に詳しく解析してきました。その結果として、化学反応条件を制御することによって、短時間での成分分離、各成分の収率向上、あるいは各成分の構造変質の最小化等の実現が可能であることを、示してきました。具体的な例としては、酸素酸化によるリグニンの分解過程で、共存する多糖類の分解が付随すること、また、リグニンの酸処理では、同モル濃度であっても硫酸よりも塩酸を用いた方がリグニンの分解溶出が速いこと等を、反応機構的に明らかにしてきました。これらの研究成果は、化学反応条件の制御によってバイオリファイナリーにおける環境負荷の最小化が可能であることを、示唆しています。したがって、目的に応じた(どの成分を主要生成物とするか等)低環境負荷のバイオリファイナリーに関する新規化学反応系の構築等が可能と考えられるため、共同研究等を実施することによって、これを実現していければ、と考えています。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  バイオマス、バイオリファイナリー、パルプ、紙、漂白、蒸解、環境、環境負荷、多糖類、糖、酸素、リグニン、フェノール、木材、樹木、植物、木質、木化、化学、ケミストリー、機構、メカニズム
キーワード2  :  バイオマス利用、バイオリファイナリー、環境負荷低減、化石燃料代替エネルギー開発、脱炭素