プロフィール
専攻 |
生産・環境生物学専攻
Department of Agricultural and Environmental Biology
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研究室 |
作物学研究室
Laboratory of Crop Science
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職名 |
教授 / Professor |
一般の方へ向けた研究紹介
代謝機能を正しく理解して新しい作物を作る
世界的な食料問題・気候変動・環境破壊を考えると、今後の農作物生産には収穫量の向上と持続性の確保の両方が求められます。耕作可能な土地や石油・鉱物資源は限られているので、限られた耕作地で、化学肥料の施用量を最小限に抑えた上で、全人類を養えるだけの農作物を生産し、得た収穫物を十分に(無駄なく)利用する必要があります。このような課題に答えるために、私たち「作物学研究室」は、作物の多様な代謝機能に着目しています。研究対象とする作物は限定していませんが、現在はイネ、ダイズ、サツマイモを用いて、光合成の主要産物であるデンプンやショ糖の代謝や、窒素・リン・硫黄を含む化合物の代謝の制御に関わる遺伝子や環境要因を明らかにしようとしています。作物種によって形態や生理、または収穫部位やそこに貯蔵されている物質(デンプン、タンパク質、脂質など)が異なるため、生産上の鍵となる代謝経路も作物種によって異なります。また、作物の部位(葉・茎・根など)によっても代謝機能は異なります。したがって、収穫量や肥料利用効率、または環境ストレス耐性を向上させた新しい品種や栽培方法の開発には、対象とする作物種の代謝機能を正しく理解することが重要です。また、これまでに得た代謝機能に関する知見を利用して、収穫部位(例えばコメやイモ)の品質改良や、それ以外の部位(例えば茎や葉)の新しい利用法を目指した研究にも取り組んでいます。
教育内容
圃場に撒いたタネが実験室で実る!
作物学研究室では「グリーン・トランスフォーメーション(GX)」を目指して、1)安定的で持続可能な作物生産と、2)作物の多用途利用の2つを大きな目標に掲げています。基本的な研究手法としては、多様な品種や遺伝資源を圃場や温室で栽培し、それらの収穫部位の形成過程や貯蔵物質の蓄積過程を、作物生理学的手法(バイオマス生産、収量構成要素、光合成特性、イオノームなど)、生化学的手法(酵素活性、メタボロームなど)、分子生物学的手法(トランスクリプトーム、形質転換)を駆使して多面的に解析します。日々の研究の進め方(在室時間・実験のスケジュール)については学生さんの自主性を重んじています。部活やアルバイトも自由です。一方で、圃場での作業(播種・移植・サンプリングなど)や多検体の処理は皆で協力して行うため、チームワークやコミュニケーションも大切にしています。
【最近の学位論文】
イネ枝作り酵素変異体を用いた難糖化性澱粉の生理機能解析(修士)
ダイズの冠水抵抗性に関する系統間比較解析(修士)
イネおよびソルガムの糖代謝における液胞型インベルターゼ遺伝子の役割に関する研究(博士)
グルタミン酸脱水酵素遺伝子を導入したイネの生理学的解析(博士)
【卒業・修了後の進路】
官公庁(農水省、地方自治体)、研究・教育機関、種苗会社、食品メーカー、農業機械メーカー、商事会社、金融機関など
共同研究や産学連携への展望
代謝機能の研究なら作物種は問いません
作物学研究室の大きな目標は、SDGsの「目標2.飢餓をなくそう」・「目標12.つくる責任つかう責任」・「目標13.気候変動に具体的な対策を」に当てはまると思います。また、国内の政策「みどりの食料システム戦略」の目標である「収穫量の向上と持続性の確保の両立」に答えるべく、私たちは作物生産の省資源・省力化を目指した研究に取り組んでいます。私たちの強みは、作物種ごとや部位ごとに異なる代謝機能の解析に豊富な知識と実績があり、対象作物やその作物・部位の用途に応じた研究を進めることができることです。作物の代謝機能解析を通して、バイオマス生産や収量形成の鍵となる代謝経路・酵素・遺伝子を明らかにして、そこから得た知見を使って新しい品種の作出や栽培方法の開発に取り組んでいます。例えば、土壌中の肥料成分の吸収・同化・代謝に関わる酵素や遺伝子を明らかして、そこから得た知見を用いて肥料利用効率の向上に活かそうと考えています。また、「生産した作物を無駄なく使う」ことを目指して、未利用部位の新しい利用法にも取り組んでいます。例えば、イネの茎で特異的に発現する糖代謝関連遺伝子を用いて茎の糖組成の改変し、食用にも飼料用(またはバイオエタノール用)にも使える新しいイネ品種の開発を進めています。現在の研究対象は食用作物や飼料作物ですが、過去には香料作物を扱ったこともあり、特用作物(の二次代謝物)にも興味があります。
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
キーワード
キーワード1 : 植物、作物、収量、バイオマス生産、光合成、同化産物、代謝、酵素、環境応答
キーワード2 : 食糧問題、気候変動、不良環境、持続的農業