プロフィール
専攻 |
生圏システム学専攻
Department of Ecosystem Studies
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研究室 |
水域保全学研究室
Laboratory of aquatic conservation
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職名 |
助教 / Research Associate |
一般の方へ向けた研究紹介
東京湾の干潟の生き物
日本の、特に都市の、海岸線は1960年以降開発が盛んに行われてきました。沿岸の干潟やヨシ原は埋め立てられ、多くの海岸線はコンクリート護岸に置き換わっています。でも、日本で最も開発された東京湾にも、まだ貴重な干潟やヨシ原がわずかですが残っていて、干潟やヨシ原に適応した生き物が生息しています。これらの生き物の生態を研究することは、新しいことを知るという純粋な好奇心を駆り立ててくれるとともに、その生き物を保全する方法のために必要な情報をもたらしてくれます。21世紀に入り20年、時代の価値観は開発から保全へと少しずつ移っています。ヨシ原のトビハゼ、干潟のゴカイやアサリ、名前は知られるようになったけど、その生態はまだまだ知られていないことが多く、時代が求める面白い研究対象です。そんな生き物の研究を東京湾の干潟でしてます。
教育内容
干潟を歩こう
私たちのグループでは、東京湾に残された貴重な干潟をフィールドに、浅海域の生物の研究をしています。対象の生物は、数μmの珪藻を中心とした底生微細藻類から、数mmのゴカイなどの多毛類、そして数cmのカニや二枚貝、大きなところでは数十cmのアカエイまで、これらの生き物を求めて、ドロドロになりながら干潟を歩きます。残された東京湾の貴重な河口干潟ですが、その周りに住んでいる人々が、上流の流域圏の人々が関心を持ってくれることはあまりありません。私たちの干潟の生き物の研究は直接的に干潟を救うことはできませんが、その研究成果は人々が興味を持ってくれるきっかけとなるとともに、人為行為が沿岸の生態系に与える影響を軽減するのに役立つと信じてます。卒業生は、水産関連の研究機関、水産物をあつかう業界、水環境を調査する会社など、水関連の仕事に就く人が多いです。
共同研究や産学連携への展望
学生を通して
私たちは様々な形で、生物多様性を含め生態系から大きな恩恵を受けており、今ではその保全が必要であることを疑う余地はありません。もちろん沿岸域も保全すべき対象ですが、産業や生活の場でもあり、保全と開発という一筋縄では解けない問題を抱えている場でもあります。この手の問題は、研究から得られた知見が特効薬として効くことは少なく、直接のつながりのない人も含めて、より多くの人が関心を持ってくれることが大切であり、その方法の1つとして若い人たちの教育が挙げられます。そこで、私たちの研究室では、担当する学生実習「沿岸生態学」において、「江戸川放水路のトビハゼの保全」をテーマに、外部の講師にお招きし、複雑な社会問題とのかかわり方について学ぶカリキュラムを実施しています。私たち大学の研究者、地元の博物館でトビハゼに詳しい学芸員、生態系に優しい工法の建設会社の実務者、そして未来への志を持っている学生が、同じ干潟に集いトビハゼの観察を行い、異なる視点を持っている多様な人々が交わることは大きな刺激となり、参加者全員の中に何らかの変化をもたらすことを実感しています。これからも、沿岸生態の社会問題をテーマに、このような機会を増やせていければと思っています。
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
キーワード
キーワード1 : 干潟、海洋生物、水産、生態系エンジニア、生物多様性
キーワード2 : 沿岸開発、生物多様性の喪失、水質汚濁