プロフィール

藤田 剛

藤田 剛

FUJITA Go

専攻 生圏システム学専攻 Department of Ecosystem Studies
研究室 生物多様性科学研究室 Laboratory of Biodiversity Science
職名 助教 / Assistant Professor

一般の方へ向けた研究紹介

農地景観で生物多様性が維持されてきたしくみを理解したい、まもりたい

 日本の農地も大きな変化の時代を迎えています。気候変動だけでなく、人口減少による田んぼや雑木林の休耕や管理放棄、農地整備による農地の近代化、都市への人口集中による都市近郊の農地減少など、人間社会の変化の影響を強く受けているのも農地だからこその特徴です。
 かつて田んぼや畑、ため池や雑木林は、日本にくらす人々が生きものと出会い、その価値を学ぶ場としての役割も担っていました。その身近な生きものたちが、農地で進む変化とともに日本全域にわたる規模で減少したり絶滅したりしているとされています。
 日本の農地景観での生物多様性の保全を進めるためには、日本の農地に特徴的な細かいモザイク状の配置や田んぼや水路などの水条件の比較的急激な季節変化が、生物多様性の維持にどう関わっているのかを理解するのが重要な鍵になると考えられます。
 わたしは、農地景観の豊かな生物多様性のシンボルとされる猛禽サシバを中心に、そのサシバの生息を支える田んぼや畑、ため池や雑木林の生きものに注目し、サシバの分布北限にあたる東北東部で、10年以上にわたって研究を続けてきました。農地景観にくらす生きものたちの空間動態が、生きものどうしの相互作用を通して生物多様性を維持する生態学的なメカニズムの謎解きに取り組んでいます。

教育内容

問いを見つけ、答えを探す方法をデザインする科学の技と、データが示す「事実」を尊重する科学の姿勢を学んで欲しい

 学部3年生を対象にした「生物多様性科学実習」では、これまでに環境保全型農業に取り組んできた田んぼなどの農地や、都市に残された森などを対象に、これらの生息地の生物群集の現状や保全活動の効果を生態学的な手法で調べ解析する手法を実習しています。また、実際に環境保全型農業などの活動をつづけてきた農家の方たちとの情報交換や議論の場提供も目指しています。
 具体的には以下の3つをプログラムの中心にしています。

(1) 環境保全型農法が進められている千葉県野田市の里山景観を対象に、有機農法の多様性保全への効果を測定するための生態学的調査法を実習する。
(2) 鳥や植物など都市林に生息する生物を題材に、生物群集の動態を理解するための生態学的調査法を実習する。
(3) 1と2で実習する調査デザインの背景となる生物統計学の基礎を、実際に統計ソフトウェアを用いて実習する。

 研究室や同じ専修や専攻に所属する学部生や大学院生のために、たとえば日本の典型的な農地景観であり、かつ、わたしが地元の農家や市民グループ、地方自治体とともに保全活動を進めてきたフィールドを対象に、生態学が築き上げてきたダイナミックな自然観の最先端を学ぶ機会だけでなく、広く地域の自然史を理解しその地道な蓄積の大切さを身をもって学ぶ場を提供したいと考えています。
 加えて、自然科学に携わる社会的意義とその醍醐味を、生物多様性維持に関わる生態学的メカニズム解明に有効なデータ収集デザインを自分で模索する過程をとおして経験し、得られたデータや解析結果が示すことを尊重する科学的方法と科学者の姿勢を学ぶための場づくりを目指しています。

共同研究や産学連携への展望

田んぼの生きもの保全と自然史教育をキーワードにした地域での町づくりの社会実装を目指す

 農地の多面的利用の方法と技術を、より積極的かつ実現しやすい形で、地元の自治体や農家の意識ある方たちのグループとともに社会システムとしての実装を目指しています。
 また、幼児や小・中・高校生たちが休日だけでなく放課後にも、彼女や彼らのくらす家や通学路、保育園や学校のまわりの自然に触れ、その美しさや価値を日々自然な形で学び続けられる、地域の自然史の蓄積と教育システムの構築を進めています。
 こうした町づくり活動の社会システム構築やネットワークづくりのノウハウを蓄積されてきた企業、新しく始めたい企業の方々の参画を期待しています。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  農地景観、生物多様性、高次捕食者、空間動態、移動分散、生息地保全、鳥類、ネズミ類、カエル類、ため池
キーワード2  :  耕作放棄、農地の集約化、農地の多面的利用